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ダリアとユークリッド断片
「ダリア?」
「……どうした、ユーク」
「すみません。あなたが、どこかに、行ってしまったような、気がして」
「大丈夫だ。私はここにいる」
 ――ここに。
 ダリア・シャール・バロウズはちいさな手を握り締める。
 だが、きっと、ユークリッドはそれには気づいていないだろう。今、ユークリッドから、ダリアの姿は見えていないはずだから。それでも、ダリアの声が聞こえたことで、ユークリッドは青ざめてすら見える白い面に笑みを浮かべる。
「よかった。ダリア、次はどこに向かいますか?」
 不安でないはずはない。曖昧な足元、霞んだ意識。言葉に出さないけれど、ユークリッド自身で気づいているはずだ。自分の立っている場所が、一歩間違えばすぐに崩れ落ちてしまう、儚いものでしかない、ということくらいは。
 けれど、ユークリッドの表情には少しも迷いはない。鮮やかな色の目を瞬かせ、ダリアの言葉を待っている。
 ダリアへの、手放しの信頼。その重さとあたたかさを、確かに感じる。
 そう、あたたかいのだ。手の触れられる場所にいなくとも、ユークリッドの息遣いが、体温が、すぐ側にあるものとして、伝わってくる。きっと、ユークリッドもそうなのだろう。だからこそ、行く先の見えない世界に、毅然として立っていられるに違いない。
 ならば。
「決まっている」
 見えないとわかっていても、ダリアは、不敵に笑う。
 ユークリッドの信頼を受け止めて、凛と、声を張る。
 
「この扉の、向こうに」
 
 さあ、始めよう、「二人目」のユークリッド。
 今度こそ、このくそったれなプログラムを、終わらせてやろう。

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突然書きたくなった、ダリアとユークリッド。
いつかきちんと書いてあげたいなー。
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2013/04/30 21:52 | 小説断片

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