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Twitter300字SS「光」

 今日も秘策――待盾署刑事課神秘対策係は暇である。

 そんなわけで盗犯係の事務作業を手伝う八束だったが、どうしても目の前に座る相棒、南雲が気になって仕方ない。
 見事なスキンヘッドに凶悪な目つき。警察官よりその筋の人を思わせる面構えの南雲は、普段から消えない眉間の皺を更に深め、何故か懐中電灯をあちこちに向け、手鏡と睨めっこしていた。
「さっきから何してるんですか、南雲さん」
「頭が上手く輝くライティングを考えてる」
「は?」
「毎日剃る手間がかかる割に変化が無いから、せめて光り方のバリエーションが欲しいなと」
「目にした人が反応に困るのでやめましょう。わたしも現在進行形で困ってます」

 どこまでも、秘策は暇である。

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Title: 今日も南雲は仕事をしない

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2016/02/06 21:00 | 小説断片
Twitter300字SS「写真」

 写真帖に、一枚、また一枚と写真が増えていく。
 最初は輪郭すら定かでなかった風景が、人の姿が、徐々に焦点を結んでいく。撮影の上達を感じると同時に、四角い世界に僕らの「足跡」が残されているのだと理解する。
 鈴蘭は、写真帖を繰る僕の横で、獲物の急所を見据える射手のごとく、分厚い壁に囲まれた塔に狙いを定めていた。
「ねえ、ホリィ」
 ホリィ。僕の名前。歌うような声の余韻を確かめてから、顔をあげる。
「もうすぐ、お別れだね」
 かしゃり。鼓膜を震わせる音色。
 きっと、現像された写真に写るのは、僕らの旅の終着点。
 
 その頃の僕は十四歳で、《鳥の塔》の兵隊で、ある《種子》を運ぶ旅の途中で――その旅も、もうすぐ終わろうとしていた。
 
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Title: モノトーンの足跡
 
 
 
 
 そして、僕の手には、写真だけが残された。
 
 僕の世界は《鳥の塔》と、それを取り巻く隔壁の内側のごく一部だけ。
 だから、この四角く切り取られた風景は、写された人々は、どれも僕の知らないもの。
 目にすることさえなければ、知らないまま生きていくはずだった、もの。
 
「意地悪ですね、ホリィ」
 
 ああ、本当に意地悪だ。
 ホリィ。僕のたった一人の片割れは、僕がわがままだってことを、誰よりもよく知っていたはずなのに。
 こんな、記憶の切れ端だけでは足りない。
 僕は、知りたいんだ、ホリィ。君が旅した足跡を。君が触れた人のことを。
 この、四角い世界の、外側を。
 
 黒い、重たい写真機を手に、塔を抜け出す。君の見た世界に、少しでも近づくために。
 
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Title: 残されたものたち
 


2015/11/07 21:13 | 小説断片
Twitter300字SS「お盆」

 誕生日パーティに、憧れている。
 友達をいっぱい招待して、おいしいご飯にかわいいケーキ。年の数だけのろうそくを吹き消す瞬間は、主役になれる。そんな、当たり前の誕生日パーティ。
 だけど、そのささやかな夢が叶ったことはない。
 みんな、みーんな、「その日は田舎に帰るからごめんね」って言う。家に残ってる子なんて、わたしくらいだ。
「まあまあ、そんなにむくれるな」
 と朗らかに笑う白髪のおじいちゃん。
「おや、大きくなったねえ。お誕生日おめでとう」
 と頭をなでる、いつまでも若いままのひいおばあちゃん。
 いつもは会えない人たちが帰ってきて、わたしの誕生日を祝ってくれる。それが、嫌いってわけじゃあ、ないんだけど。

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Title: わたしの誕生日



2015/08/01 21:00 | 小説断片
俺のグルメFES『熱に弱い』

 酷く暑い朝。対策室の扉を開いた八束は、硬直した。
「おはよー、八束」
 ソファの上に巨大スライムが鎮座し、しかも相棒の南雲の声で喋ったから。
「どうしたんですか!」
「暑くて溶けた」
「治るんですかそれ」
「うん。冷凍庫のアイス取って」
 慌てて青いアイスを取り出し、スライムに渡す。
「あと、どうすればいいですか?」
 もしゃり。見えない口で確かにアイスを咀嚼したスライムは、重々しく言った。
「かき氷食べたい」
「それで、元に戻るんですか?」
「溶けたら冷やして固めるものだよ。あ、スイカバーも食べたいなー」
 
 
「……という夢を見ました」
「夢でもぶれないねえ、俺」
 南雲は、八束が夢の中でも見た、ソーダ味のアイスをもぐもぐしていた。

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Title: 熱に弱い


★SS企画《俺のグルメFESTIVAL》の参加作品です。
 企画サイト→ http://halves.web.fc2.com/GRMfes/

2015/08/01 11:49 | 小説断片
Twitter300字SS「願い」
「願いを叶えるメカニズム?」

 ナグモは「そ」と左手で帽子の鍔を持ち上げて。

「リッカちゃんが契約してる『鳳蝶』は人の願いを叶えるっていうけど、どうやって叶えるのかなって」
「『願いを叶える』というのは正確じゃないわ。『鳳蝶』は境界を越える力を持ってる。契約者を、他の世界に連れて行くの」
「それがどうして『願いを叶える』って話になるんだ?」
「ここでない場所に『願いが叶った世界』があるかもしれないでしょう? 私が、願いを叶えたように」
「パラレルワールド、か。俺の願いが叶った世界も、どっかにあるんだろうな」

 口の端を歪める。右手に握った刀の切っ先を、リッカの喉に向けたまま。

「ね、『鳳蝶』、渡してよ」

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Title: 或る分岐にて




2015/07/04 22:25 | 小説断片

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