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Ex:マフィンの話
久々に小説断片ー。
本で空色読んでいない人向けに。
幕間とはちょっと違うのですが、ディスとチェインは地味に仲良しですよってお話。
後で空色ページに載せますが今のところはこちらに。
 
Ex:マフィンの話
 
 
 チェインが作るマフィンは美味い――ディスこと『ディスコード』は常々そう思っている。甘さ控えめ、けれども飽きのこない絶妙な味付け。もちろん舌触りも最高だ。
 剣にして鍵たる『ディスコード』がこんなものにうつつを抜かすなど言語道断、と己に言い聞かせてはみるものの、やはり甘味の魅力には勝てない。勝てるはずもないのだ。
 故に今日もディスは出来立てのマフィンを運んでくるチェインの姿を、紅茶のカップ片手にじっと見つめていた。セイルの銀色の瞳で。
「お待たせ。ほら、アンタの分だよ」
 皿の上に載せられたマフィンを見て、ディスの瞳が俄然輝く。何故セイルはこのマフィンの美味さを理解しないのだろう、いや、セイルも心から「美味しい」と言いはするのだが、そもそも何を食べてもそれがどんなゲテモノでも「美味しい」としか感じないシアワセな舌だから全く信用できない、とか何とか考える。
 そのセイルと同じ舌を使っているのだから味音痴でもよさそうなものだが、ディスは何処までも美食家である。そのディスが美味いと断じるマフィンは、今日も最高の出来であった。
 無心にマフィンをもぐもぐするディスを、チェインは穏やかな表情で見下ろしている。これが異端に恐れられる神殿の影追い『連環の聖女』とは誰も思わないだろうし、一度は本気で相対したディスも、戦っている時の彼女とこうして菓子を作っている彼女のイメージが未だ一致せずにいる。
「そうやって、おいしそうに食べてくれるのが一番嬉しいよ」
「ほうは?」
 口の中いっぱいにマフィンを詰め込んで顔を上げたディスだったが、その拍子に喉に詰まってちょっとむせた。何とか飲み込んで、何となく頭の中に浮かんだ言葉を口にした。
「なあチェイン。アンタ、菓子全般作るの得意みたいだけど……昔っからそうだったのか?」
「そうだね。家族が……特に姉さんが、甘いものが好きでね。生きてた頃はよくねだられたものだよ」
 そう言ったチェインの視線は、遥か遠くを見ていて。
 チェインの姉は異端研究者であり……セイルの兄、『機巧の賢者』ノーグ・カーティスに殺されたのだと、いう。ディスは喉元まで出かけていた言葉と共に口の中に残っていたマフィンの欠片を飲み込む。
 一瞬、沈黙が流れたけれど――チェインはふと息をつき、先ほどまでの穏やかな表情を取り戻してディスに問うた。
「紅茶のおかわりはいるかい?」
「……ああ、いただくよ」



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■あとがきのような
単にお菓子を振舞ってるチェインが書きたかっただけなんだ。
あともぐもぐしてるディス。
この二人はどちらも空気が読む能力が高いので、重要なところで言葉を飲み込んじゃう二人でもあるのです。
あとセイルは中で寝てます。
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2011/06/30 23:59 | Comments(0) | 小説断片

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