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2017/08/17 08:37 |
読書記録:『背中合わせアンソロジー アルギエバ』
『背中合わせアンソロジー アルギエバ』
編集:藍間真珠 さま(著者は別途記載)
サークル:藍色のモノローグ
ジャンル:背中合わせ

「背中合わせ」をテーマとした、十六人の作家によるアンソロジー。
 同じ「背中合わせ」というテーマでも、舞台やジャンルは様々です。頁数は404頁と大ボリュームですが、最後まで一気に読み進めてしまいました。
 以下、十五作(全十六作より自作除く)の感想になります。


■屋上の魔法使い 秋乃さん
 最初の方は、読んでいて胸がきりきり痛みました。これは辛い。途中で、ちょっと小峰さんから目を逸らしかけてしまいました。
 けれど、背中合わせに語りかけてくれる人がいる、思いを理解してくれる人がいるということに、ほっと安堵しました。そう、大丈夫。そう思ったら、自分の目の前も、ぱっと開けたような気がしました。
 そして最初の一文の行き着く先に、「おお」と膝を打ちました。これは素敵な驚きです。

■西に鸚鵡、東に鷹 藤原湾さん
 対照的な二人のやり取りに、ほほえましい二人だなあと思っていたら、まさかの急展開に吃驚しました。簡単には終わらない予感はしていましたが、まさかこうなるとは……!
 けれど、それも必然だったのかとも、思います。そこは二人のいるべき場所ではなかったし、二人の前に示された道こそが、二人の行くべき道だったのかもしれません。
 最後に繰り返される言葉から、彼らの在るべき場所と、お互いを支える存在の確かさを感じて胸が熱くなります。
 
■ギイ・クラレンスの挑戦と失敗 立田さん
 世界観が本当に面白い。背中合わせ、という言葉一つからあふれ出る鮮やかな世界。まさしく運命を分かち合うことになる「半身」のシステムには、つい唸らされました。
 そして、そんな不思議な世界に生きている少年ギイが、半身の少女のために繰り広げるドタバタは、心の底から応援してあげたくなります。そして、彼が導いた結末にニヤリとするのも、忘れてはいけません。最初から最後まで、はらはらしつつもどこか安心できる、前向きなお話です。
 それはそうと、羊の執事かわいすぎませんか。
 
■茜 蝶々さん
 二人の交わす言葉を聞きながら、ひたひたと、冷たい水が這い上がってくるような印象を受けました。
 律の背を追う水澄の姿、水澄の内側に映る律の記憶。人を殺しながら生きてきた二人のあり方が、交わりそうで交わらないもどかしさ。
 それらを全て飲み込んだ上で、最後の「背中合わせ」の一瞬が、醜さも含めた複雑な感情を伴って描かれているのですが、それこそが、冷たく美しい一枚の絵として映りました。
 
■トゥリからの手紙 山田さん
 トゥリ、イハナ、サデ、ピルヴィ……。それぞれにそれぞれの物語があり、ぶつかり合って、やがて手を取り合って、本当に立ち向かうべき相手と対峙する。スピーディかつ熱い展開に、手に汗握らずにはいられませんでした。
 その戦いの結果が、このラストで結ばれたことに、本当に安堵しております。
 しかしサデさんかっこいいですよね。かっこよくも、ちょっと隙のあるところにきゅんとします。トゥリとのやり取りに、つい笑みがこぼれてしまいました。
 
■サテモ散ル散ル花ノ先 楠園冬樺さん
 頭の中に焼きつく節と、選び抜かれた言葉の鮮やかさ。自然と口ずさみたくなる、五と七のリズムには、計算されつくした美しさを感じます。
 けれど、その美しさの中で語られるのは、どろりとした感触を伴った、ある愛情の歪み歪んだ果てでした。美しいからこそ、その生々しさが容赦なく迫ってくる感覚に陥ります。
 そうして華やかな言葉を追いかけていくだけでも背筋がゆっくりと冷えていくのに、その結末には「ひっ」と息を飲みます。恐ろしい。
 
■最後の竜が眠る森 立神勇樹さん
 世界観がたまらなく好みです。一度文明が滅びた世界、科学技術を信奉する宗教組織デウス・マキナと、竜と言葉を交わす王による国アルマ・ドラコ。端々に語られる、語られざる物語に思いを馳せずにはいられません。
 そして、そんな浪漫溢れる世界の物語を紡ぐのはデウス・マキナのパラディン、オブリーオと竜騎士エクエス・ドラコ、アルマ・ドラコの王エルシュライン……。
 それぞれが抱く思いや望みが折り重なりながら、最後の「森」での対峙に繋がっていく流れの美しさに息を飲みます。
 しかし最後の最後の展開には、にやにやが止まりません。オブリーオとエクエス・ドラコの交わす言葉の一つ一つが、胸きゅんです。
 
■ちいさな悪党のはなし 真空中さん
 ほろ苦い味わいながらも、地に足のついた優しさに満ちた、ちいさなお話。
 何故「悪党」は「悪党」なのか。「良い奴」になりたいという願い。重ねられていく問いかけと理不尽、そして、疲れ果てた「悪党」を背中で受け止めてくれる「少年」。
 背中を貸すということ。少しだけ寄りかかって、一つ息をつくこと。その優しく大切なひと時は、何ものにも換えがたいものがありますね。
 
■フェアシュプレッヒェン 恵陽さん
 どこか懐かしさもある、RPG風ダンジョンアタックの雰囲気にわくわく。次々と立ちはだかる魔物たち、主人公たちが操る魔法の鮮やかさ。そんな中で織り交ぜられる、少女たちの物語が熱いです。
 フランツィスカがとっても男前です。立ち回りもさることながら、何よりも心栄えがかっこよすぎます。そしてそんなフランツィスカと肩を並べようと頑張るユーリアも素敵。もちろん、そんな彼女たちを支える相棒二人も。
 彼らの冒険はきっとこれからも続くのでしょうが、彼女の約束が叶う日を待ち望みます。
 
■あおいそらに ひさこさん
 背中合わせでの演奏って、いいですよね! その構図を想像しただけで胸がぎゅうっと締め付けられます。
 密村が木鳥に向ける視線や言葉の優しさに胸を打たれ、失われていた音が聞こえてきた瞬間に鳥肌が立ちました。それは、木鳥にとっては気づきであり、一つの別れであり、そして新たな始まりだということが、震えるような感覚と共に伝わってきました。
 音楽を通して語り合えるというのは、本当に素敵なことですね。青空の下の、とても爽やかなブレイクスルー。
 
■銀の滴降る降るまわりに 玉蟲さん
 乙楠とアイカリシマの、決して馴れ合うことのない、けれどお互いのことを思う距離感がとても素敵です。決して同じ世界に生きてはいけないけれど、それでも心からお互いの幸せを願う、そんな関係に憧れます。
 この物語の中では、何度も「幸せ」という言葉が繰り返されますが、最初は乙楠の中でほとんど呪詛のように響いていたその言葉が、最後には二人の行く未来を思わせることに、希望を見出しました。

■砂に見る夢 鳥井 蒼さん
 時間の流れと、そこに残された思い。やっと伝えることのできた言葉。歯車が狂ってしまったが故の結末と、本当は繋がっていた二人。
 二人のすれ違いと、「シリル」が選んだ悲劇的な結末に心が痛みつつも、その二人が願った世界こそが今まさに「彼」の立っている場所なのだな、と思うと何とも不思議な感慨を呼び起こします。
 一抹の寂しさとあたたかさを心の中に残してくれるお話です。
 
■ドリーム IN どり~む 御剣ひかるさん
 愛良ちゃんのかわいさに終始にまにましっぱなしでした。恋に揺れて戦う女の子のかわいらしさは半端ないです。愛良ちゃんが目にしてしまったある光景をきっかけにしたドタバタには、「きっとこれは……」とニヤっとできる安心感が。
 愛良ちゃんが挑む悪夢も、コミカルながらどこか身近な恐怖を交えた世界で、思わず「わかるわかる」と頷きたくなります。
 恋も戦いも頑張れ愛良ちゃん。彼女が幸せを掴むことを心から願います。

■背中合わせの家 渋江照彦さん
 怖い……これめっちゃ怖いですよ……!?
 ある大学教授が「興味深い話」という前置きで語る物語なのですが、これぞ「怪談」です。最初に感じた恐怖と違和感が、自分の側にじわじわと這い寄ってくる感覚に背筋がぞわぞわします。しかも、今も変わらずにすぐ側にある、というのがまた。
 読み終わってからも、背中が気になります。部屋のあちこちを見渡して、いつもと違う何かが視界の中にないかと……。恐怖は、なかなか消えてくれそうにありません。

■雲居の超能力者は朝が早い 藍間真珠さん
 謎に包まれた宇宙船グラントルや超能力者、空中警備隊の浪漫溢れる設定にわくわくします。断片的に伝わってくる情報から、主人公エミーリヤの立つグラントルや、そこに生きる人々を想像する楽しさがぎゅっと濃縮されています。
 そんな世界を駆けるエミーリヤとジルドの立ち回りのかっこよさ、やり取りの軽妙さにニヤニヤせずにはいられません。彼ら二人の出会いは、更なる物語を予感させますね。夢は広がるばかりです。


ちなみに自作は「チョコレート・パラノイア」という現代ミステリもどきです。
だからスキンヘッドのオトメンが書きたかっただけなんだって……!!(顔を両手で覆った)
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2014/03/15 18:21 | 読書記録

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