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2024/11/29 05:40 |
リハビリ話
最近あんまり書いてないのでリハビリがてら


 僕の一日は、日が水平線の向こうに隠れてから始まる。この身体が、太陽の光ととことん仲が悪いのだから、仕方のないことだけど。
 それに、太陽の光がなくとも、僕の仕事場であり住処でもある『紅姫飛空雑技団』の興行船『大紅姫号』は十分すぎるほどに明るかった。船のいたるところには魔法のランタンが輝いていて、もしこの船を遠目に見れば、闇の海に浮かぶ巨大な鯨に見えるはずだ。船が丸々一つの町のようだ、というダリアの言葉も、決して誇張じゃない。それほどまでに大紅姫号は巨大であり、数多くの人が乗り合わせ、それぞれの生活を送っている。
 もちろん、僕もその中で生きている一人だ。
 賑やかな乗組員に囲まれ、日々お祭り騒ぎを繰り返し、楽園を巡っていく興行の旅。終わりの定まらない旅は、僕にとって、いつだって新鮮だ。
 今までは、「終わり」ばかり、見つめていたから。
 ざあ、と。
 強い海風が、僕のローブの裾を靡かせる。昼間は必須のフードを外して、魔法の光煌く世界に目を凝らしてみる。
 今の時間は、船の甲板に設えられた舞台で、夜の公演が始まっているはずだが、診療室を兼ねた僕とダリアの部屋は舞台とは逆の位置にあるから、船体の震えと歓声が伝わってくるだけ。どんな演目なのか、興味はあるけれど、僕は僕の務めを全うする必要がある。ダリアと交代する前に、足らないものを確保しようと倉庫に足を向けた、その時。
 かん、かん、と。階段を踏む足音が、降ってくる。
 視線を上げると、頼りない足取りで降りてきたのは、見慣れた青年だった。痩せぎすで小さな身体、ぼさぼさの髪に目を覆う飛行用のゴーグル。ゴーグルのせいで表情は判じづらいものの、何かを両腕に抱え、見るからに憂鬱そうに肩を落としている。
 ……と思ったら、階下にいた僕の姿を認め、「あっ」と上ずった声を上げた。
「どうしました、ブラン?」
 僕が問いかけると、ブランは細い腕に抱えたものと僕とを交互に見比べて、それから突然僕の腕に抱えていたものを押し込んできた。
「こ、これっ、船主に渡しといて!」
「……船主に?」
「お、おおお俺っ、急いでるから! ねっ! よろしく!」
 かわいそうなくらい引きつった笑顔を浮かべたブランは、手を振ったかと思うと、でべでべ階段を駆け下りていってしまった。
 一体、今のは何だったのだろう。
 渡されたものは、よく見ると紐で纏められた封筒の束だった。船主宛だろうか、と思って宛名に視線を移したその時、今度は上から軽い足音を立てて、少女……エアが降りてきた。短く切りそろえた髪に、体の線を隠す大きめの飛行服を纏った姿は、ぱっと見「少年」にしか見えない。エアが表向きには男として通していることは、大紅姫号の乗組員たちにとっては周知の事実なのだが。
 そんなエアは、きょろきょろと大きな目であたりを見渡し、僕のいるあたりに向かって、よく通る声をかけてくる。
「ブラン、船主に手紙、きちんと届けて……って何でユークが持ってんのさ」
「いえ、先ほど通りがかったら、押しつけられまして」
「あーっ、また逃げたなあいつ! こら待てブラン、お使いくらい真面目にやれぇ!」
「ごめんエアあああああ」
 情けない返事は、そう遠くない場所から聞こえた。あの足の遅さだから、この船でも抜群の運動神経を誇るエアなら、すぐに追いつけるだろうなあ。
 そんなことを考えている間にも、エアは既に階段をほとんど一足で飛び降りて、ブランを追いかけていた。
 そんな、風のような二人が駆け抜けていった後に、残されたのは謎の手紙。

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特に意味もなく、思いついたものを思いついたところまで。
前にも言ったと思いますが、この「ブラン」と空色のブラン・リーワードは別人です。
いつものことながら、わかりづらくてすみません。
一応同名であることに意味は無いわけじゃないのですが。
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2014/02/01 10:37 | 小説断片

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