※はじめに
・空色より五十年ほど後のお話です。
・本文の「ブラン」は空色のブラン・リーワードとは全くの別人です。
・まだ試行錯誤中のため、本番とはキャラの喋り方とか諸々が異なる場合があります。
■ ■ ■
「あれ、ブラン、こんなとこにいたんだ」
「……ん」
ブランは、ゴーグル越しの視線をちいさな少女に向けた。
ゆらゆらと揺れる魔法光のランプの下、夜風が少女の鮮やかな山吹の髪を揺らす。夜空より黒い自分の髪とは大違いだ、なんてくだらないことを考えながら、次の言葉を考える。
そうしている間にも、少女――エアはブランの横まで近づいてきて、その顔を覗き込んでくる。
「風邪引くよ。ブラン、ただでさえ弱っちいんだから」
「あー、確かにそうね。ありがと、それは気をつけるわ」
「眠れないの?」
「うん。よくあるのよね」
落下防止の柵に身を預けて、目を閉ざす。
そうして、目蓋の後ろに浮かぶのはいつだって、悲しいまでの、あお。
「とっても、悲しい夢を見るんだ。おれ様自身の夢じゃないんだけどね」
その言葉の意味を、当然、エアは理解しなかったのだろう。珊瑚礁の海を思わせる薄青の瞳をぱちくりさせて、ブランを見つめ返す。ブランは、口元に苦笑を浮かべて、エアの視線を受け止める。もちろん、ゴーグルが無ければとっくのとうに目を逸らしてしまっていただろうけれど。
未だに、苦手なのだ。人の視線、生きたものの前に立つこと。嫌な顔一つせず相談に乗ってくれたユークは、必ず平気になる日が来ると請け負ってくれたけれど、まだ、どうしても。
「……ブランは、さ」
「うえっ?」
ぼうっとしていた意識に突然入り込んできた声。思わず変な声を上げてしまうブランを、むっとした顔で睨んできたエアだったが、すぐに気を取り直してくれたのか、小さく息をついて言った。
「何か、いつも無理してる感じがするよ。もっと、肩の力抜いたらどう?」
「抜く努力はしてるんだけどねー」
「努力、って考えちゃってる辺りで、既に力が入ってるんじゃないかなあ」
「うっ」
「難しいんだ?」
「……そうね、すごく難しい」
そっか、と答えたエアは、満天の星が輝く夜空を見上げて、ぽつりと言葉を落とした。
「でも、ちょっと嬉しいな」
「え?」
「少しは気を許してもらえたみたいだから」
「どうして、そう思うの?」
「だって、素直に『難しい』って言ってくれたじゃん」
エアはにっと笑う。その笑顔は薄闇の中でも輝くようで、つられるように、ブランも、口元を緩めていた。
海からの風は冷たいけれど、ふと、暖かなものが、胸の中に灯ったような気がして。
「ああ……エアには、敵わないわねえ」
「そもそも、ブラン、ぼくに敵うことって何かあるの?」
「ううっ」
「あはは、冗談だって、冗談!」
ばんばん、と背中を叩くエア。その手の力強さと温もりを感じながら……ブランは、目蓋の裏の青空と、今自分が立っている場所に、思いを馳せた。
・空色より五十年ほど後のお話です。
・本文の「ブラン」は空色のブラン・リーワードとは全くの別人です。
・まだ試行錯誤中のため、本番とはキャラの喋り方とか諸々が異なる場合があります。
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「あれ、ブラン、こんなとこにいたんだ」
「……ん」
ブランは、ゴーグル越しの視線をちいさな少女に向けた。
ゆらゆらと揺れる魔法光のランプの下、夜風が少女の鮮やかな山吹の髪を揺らす。夜空より黒い自分の髪とは大違いだ、なんてくだらないことを考えながら、次の言葉を考える。
そうしている間にも、少女――エアはブランの横まで近づいてきて、その顔を覗き込んでくる。
「風邪引くよ。ブラン、ただでさえ弱っちいんだから」
「あー、確かにそうね。ありがと、それは気をつけるわ」
「眠れないの?」
「うん。よくあるのよね」
落下防止の柵に身を預けて、目を閉ざす。
そうして、目蓋の後ろに浮かぶのはいつだって、悲しいまでの、あお。
「とっても、悲しい夢を見るんだ。おれ様自身の夢じゃないんだけどね」
その言葉の意味を、当然、エアは理解しなかったのだろう。珊瑚礁の海を思わせる薄青の瞳をぱちくりさせて、ブランを見つめ返す。ブランは、口元に苦笑を浮かべて、エアの視線を受け止める。もちろん、ゴーグルが無ければとっくのとうに目を逸らしてしまっていただろうけれど。
未だに、苦手なのだ。人の視線、生きたものの前に立つこと。嫌な顔一つせず相談に乗ってくれたユークは、必ず平気になる日が来ると請け負ってくれたけれど、まだ、どうしても。
「……ブランは、さ」
「うえっ?」
ぼうっとしていた意識に突然入り込んできた声。思わず変な声を上げてしまうブランを、むっとした顔で睨んできたエアだったが、すぐに気を取り直してくれたのか、小さく息をついて言った。
「何か、いつも無理してる感じがするよ。もっと、肩の力抜いたらどう?」
「抜く努力はしてるんだけどねー」
「努力、って考えちゃってる辺りで、既に力が入ってるんじゃないかなあ」
「うっ」
「難しいんだ?」
「……そうね、すごく難しい」
そっか、と答えたエアは、満天の星が輝く夜空を見上げて、ぽつりと言葉を落とした。
「でも、ちょっと嬉しいな」
「え?」
「少しは気を許してもらえたみたいだから」
「どうして、そう思うの?」
「だって、素直に『難しい』って言ってくれたじゃん」
エアはにっと笑う。その笑顔は薄闇の中でも輝くようで、つられるように、ブランも、口元を緩めていた。
海からの風は冷たいけれど、ふと、暖かなものが、胸の中に灯ったような気がして。
「ああ……エアには、敵わないわねえ」
「そもそも、ブラン、ぼくに敵うことって何かあるの?」
「ううっ」
「あはは、冗談だって、冗談!」
ばんばん、と背中を叩くエア。その手の力強さと温もりを感じながら……ブランは、目蓋の裏の青空と、今自分が立っている場所に、思いを馳せた。
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内部的に空色24を書き終わった喜び。
まだまだ修正は必要ですが、まあそれはそれ!
というわけで、本日のモノトーンのキャラメイクをしながら、こっそり書いてたリクエスト短編を公開したいと思います。
三作目はあいあいさんのリクエスト、「クラウディオとシュンランのドライグでの日常場面」になりますー。
まだまだ修正は必要ですが、まあそれはそれ!
というわけで、本日のモノトーンのキャラメイクをしながら、こっそり書いてたリクエスト短編を公開したいと思います。
三作目はあいあいさんのリクエスト、「クラウディオとシュンランのドライグでの日常場面」になりますー。
本日、御剣ひかるさん主催の「お題バトル」に参加させていただきました!
というわけで、一時間で何とか捻出してみたお話が以下となります。
というわけで、一時間で何とか捻出してみたお話が以下となります。
あー、相変わらずすごく間が空いてしまっている……
以前ひっそりリクエスト募集した『空色少年物語』のショートストーリー。
そのうち一作が完成いたしましたのでこちらに公開。
ちょっと、消化が順不同になってます……すみません。
絶対にリクエストいただいた分は全部書きますので、のんびりお待ち下さい。
というわけで、第二作目は藤野良人さんからのリクエスト。
「ルネ「おい、料理勝負しろよ」 という若きルネさんとノーグさんを想像しました」
以前ひっそりリクエスト募集した『空色少年物語』のショートストーリー。
そのうち一作が完成いたしましたのでこちらに公開。
ちょっと、消化が順不同になってます……すみません。
絶対にリクエストいただいた分は全部書きますので、のんびりお待ち下さい。
というわけで、第二作目は藤野良人さんからのリクエスト。
「ルネ「おい、料理勝負しろよ」 という若きルネさんとノーグさんを想像しました」
すみません、募集してから一ヶ月とか経過しようとしてる……!!(汗)
『空色少年物語』ショートストーリーのテーマを募集していましたが、
やっとこさ一作目が書き終わったので公開いたします!
第一作目はむし子さんからのリクエスト。
「ディス君が空気読めないオッサンに気持ち威嚇する猫みたいにシャーってなってる話」です。
『空色少年物語』ショートストーリーのテーマを募集していましたが、
やっとこさ一作目が書き終わったので公開いたします!
第一作目はむし子さんからのリクエスト。
「ディス君が空気読めないオッサンに気持ち威嚇する猫みたいにシャーってなってる話」です。