全く、面倒くさいことになったものだ。
俺の顔が怖いのはいつものことだが、ここ数日で、ただでさえ消えない眉間の皺が更に数本増えてしまった。
俺の目には、お化けや妖怪、つまり「異界からの来訪者」が見えている。
それは生まれつきなので仕方ないし、今の問題はそこじゃない。
普段はお互い不干渉を貫くひとでなし連中が、何故か近頃になって、代わる代わるに俺を脅かそうとしてくるのだ。
隙あらば訪れるそいつらを小突いて追い返すのにも疲れてきた頃、来訪者業界に詳しい上司がいい笑顔で言った。
「最近、賭けになってるそうですよ。いかなる時も仏頂面を崩さない君を、誰が最初に脅かすかって」
「そんな賭けとっとと止めさせてください」
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Title: 北風と太陽みたいなやつ
【蛇足】
・顔が怖くていつも仏頂面してる、お化けが見える誰かさんのお話。
・『夏の青亭』の「俺」であり、『時計うさぎの不在証明』のアレです。
・場所アンソロジー『arium』の「マーメイド・ソリテュード」の語り手とも同じ人です。
・「訪れ」感弱くてすみません……一応来訪者なんで許してください……。
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