今日も俺は試行する。
飛び方は相棒を通して誰よりも知っている。誰よりも確かに記憶している。
『エアリエル』との同調の感覚、耳に響く風の歌、青い翅翼を広げて陸に別れを告げる瞬間だって。
けれど、俺が相棒を模倣したところで、俺の魂魄は『エアリエル』とは同調できない。普段相棒と同化して軽々と海を舞っているそいつは、あまりにも重く、あまりにも不自由で、地を這ってるのとほとんど変わらない。
それでいいのだと相棒は笑う。飛ぶのは俺で、霧を見通すのがお前だと。
それでいいのだと俺も思う。観測と演算が俺の仕事だと理解もしている。
理解していながら、俺は試行を重ねる。
自由に飛ぶ翼に憧れることくらいは、自由だろう?
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Title: オズワルド・フォーサイスの試行
時々、相棒は『エアリエル』を飛ばそうと試みる。
何も『エアリエル』はじゃじゃ馬ってわけじゃない。翅翼艇の中でも、素直さなら随一だ。だから、霧航士なら誰だって「飛ばす」ことはできる。
でも、それは相棒を除いた話だ。
相棒は飛べない。翅翼艇を操る才能がない。こればかりは生まれつきの適性の都合。だから相棒の何が悪いわけじゃねーことは、俺もよくわかってる。
ついでに、相棒が、俺がわかってることを、わかってないはずがない。
それでも相棒は試行を止めない。誰が無駄だと笑っても『エアリエル』を飛ばそうと試みる。
俺様はそれを笑わない。笑う理由がないから。
だって、飛ぶってのは、それだけ気持ちいいことなんだから、さ。
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Title: ゲイル・ウインドワードの所感
飛び方は相棒を通して誰よりも知っている。誰よりも確かに記憶している。
『エアリエル』との同調の感覚、耳に響く風の歌、青い翅翼を広げて陸に別れを告げる瞬間だって。
けれど、俺が相棒を模倣したところで、俺の魂魄は『エアリエル』とは同調できない。普段相棒と同化して軽々と海を舞っているそいつは、あまりにも重く、あまりにも不自由で、地を這ってるのとほとんど変わらない。
それでいいのだと相棒は笑う。飛ぶのは俺で、霧を見通すのがお前だと。
それでいいのだと俺も思う。観測と演算が俺の仕事だと理解もしている。
理解していながら、俺は試行を重ねる。
自由に飛ぶ翼に憧れることくらいは、自由だろう?
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Title: オズワルド・フォーサイスの試行
時々、相棒は『エアリエル』を飛ばそうと試みる。
何も『エアリエル』はじゃじゃ馬ってわけじゃない。翅翼艇の中でも、素直さなら随一だ。だから、霧航士なら誰だって「飛ばす」ことはできる。
でも、それは相棒を除いた話だ。
相棒は飛べない。翅翼艇を操る才能がない。こればかりは生まれつきの適性の都合。だから相棒の何が悪いわけじゃねーことは、俺もよくわかってる。
ついでに、相棒が、俺がわかってることを、わかってないはずがない。
それでも相棒は試行を止めない。誰が無駄だと笑っても『エアリエル』を飛ばそうと試みる。
俺様はそれを笑わない。笑う理由がないから。
だって、飛ぶってのは、それだけ気持ちいいことなんだから、さ。
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Title: ゲイル・ウインドワードの所感
【蛇足】
・『霧世界報告』もしくは『談話室の飛ばない探偵たち』番外編です。
・霧深い世界を飛ぶファンタジー戦闘機乗り「霧航士」の相棒同士の述懐です。
・ルールに従い、それぞれ独立した話として読めるようにしたつもりですが、どうしても対にするのが好きで……好きですね……
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