――ブラン・リーワード。
かつて名前の無い影だった友達は、そう名乗った。
「俄然名前らしくなったね」
「だろ?」
友達は、歯を見せて笑った。俺より十以上は年上なのに、時々こうして子供の顔をする。
「リーワードって珍しい響きだけど、何か意味あるの?」
すると、友達はついと氷色の目を空に向ける。見上げれば、真っ白な雲が、風に流されてゆくところだった。
「風の行く先」
ぽつり、風にかき消されかけたしゃがれ声。
それが答えだと気づいたのは、数拍の後。
「失われた言葉だ。風が俺の背中を押してくれるように、ってな」
そう言った友達は、きっと、この丘を吹く風の行く先にいる。
二度と会えないってわかった今、確かにそう感じているんだ。
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Title: Leeward
【蛇足】
・leewardって英語で「風下」って意味だった気がします。
・『アオイロソウビ』と『机上の空、論。』の番外編です。
・初見の方には優しくないお話ですすみません。雰囲気だけでも楽しんでいただけたら幸いです。
・『空色少年物語』にも関連してますがお勧めはしません(単純に長いので)。
・最近カードワース再開して『空色少年物語』の面子で遊んでたら、久しぶりにこの人書きたくなっちゃったんですよね……。
・空色二部も頑張りたいです。
・カードワースのブランは、名前の通り風属性に特化した魔術師なのですが、風魔法は原則として実体のない敵に手も足も出ないところが愛しいと思います。
・参謀がかっこいい(もしくは酷い目に遭う)シナリオは常に募集しております。
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