『山吹色外典』
著者:秋山真琴 さま
サークル:雲上回廊
ジャンル:食レポ×ラーメン×ドラゴン×天使×遠未来×ループ×ネトゲー×ボドゲ×吸血鬼×異世界×料理×偽史×作中作×年表×中二×ハッピーエンド=「パラレルワールドSFファンタジー」
ジャンルに一瞬「何すかこれ」と思いますが何も間違ってはいない、そんな短編連作集です。
公式サイトの記述を借りると「世界から世界へ飛び跳ねるように旅する存在」である「渡り鳥ソーマ、傭兵ラビット、フリーター走馬小太郎」についての六つのお話。
しかし、「まえがき」を読むと、これらの物語はそもそもがある世界における「作中作」という扱いになっているように見えます。ここに語られた物語自体が、物語世界の中でも脚色された「作り話」であるという可能性を秘めた物語……。その構成にもにやっとせずにはいられません。
では、この物語の書き手は(作品中では)誰なのか。その「まえがき」の中で「彼女」と記されている誰かは、何故、年代記に記されないイレギュラーである走馬小太郎について記述しているのか……。
とはいえ、そんなことを小難しく考えなくても、一つ一つの物語を面白く読み解くことができます。全てが語られるわけではない、あくまで断片的な物語の数々。しかし登場する人間の関係性やぽつりぽつりと落とされる言葉から、その物語世界の全容を読み解きたくなる、そんな不思議な魅力がにじみ出ているのです。そういう「想像させる」物語が好き、という私の好みも相当にあるかもしれませんが。
六つの物語の中で特に好きなのは「夜歩く者/剣駆る者」ですね。
シェロという少年が少年兵として参加した魔女狩り。しかし、それに疑問を持った瞬間に、一つの物語が始まる、という筋書き。
この物語の手に汗握る展開もさることながら、最後に付された「歴史」としての部分にぞくりとします。一体、この歴史に至るまでにシェロと彼の間に何があったのか。ステラは。そうやって、つい文章化されていない部分に考えを巡らせずにはいられないところに、これらの物語の面白さがあると思うのです。
そして、年表をざっと見て、最後の最後まで読んだ後、つい「まえがき」に戻って。
全身に走る鳥肌に気付くわけです。
彼女は本当に雲上に到達したのか。ハッピーエンドはそこにあったのか。
そんなことに思いを馳せずにはいられない、見事な構成でした。
また、前回の感想にも書きましたが、おそらく前作に当たる『世界再生の書物と一つの楽園』と同じ年表も、この物語を一通り追いかけると、また違った側面が見えてきます。
じわじわと輪郭が見えてくるような、逆に突き放されたような。
そんな「まだまだ読み足らない」という、尽きないわくわくを抱きながら本を閉じることができることは、きっと幸せなことなのだろうと思うのです。
著者:秋山真琴 さま
サークル:雲上回廊
ジャンル:食レポ×ラーメン×ドラゴン×天使×遠未来×ループ×ネトゲー×ボドゲ×吸血鬼×異世界×料理×偽史×作中作×年表×中二×ハッピーエンド=「パラレルワールドSFファンタジー」
ジャンルに一瞬「何すかこれ」と思いますが何も間違ってはいない、そんな短編連作集です。
公式サイトの記述を借りると「世界から世界へ飛び跳ねるように旅する存在」である「渡り鳥ソーマ、傭兵ラビット、フリーター走馬小太郎」についての六つのお話。
しかし、「まえがき」を読むと、これらの物語はそもそもがある世界における「作中作」という扱いになっているように見えます。ここに語られた物語自体が、物語世界の中でも脚色された「作り話」であるという可能性を秘めた物語……。その構成にもにやっとせずにはいられません。
では、この物語の書き手は(作品中では)誰なのか。その「まえがき」の中で「彼女」と記されている誰かは、何故、年代記に記されないイレギュラーである走馬小太郎について記述しているのか……。
とはいえ、そんなことを小難しく考えなくても、一つ一つの物語を面白く読み解くことができます。全てが語られるわけではない、あくまで断片的な物語の数々。しかし登場する人間の関係性やぽつりぽつりと落とされる言葉から、その物語世界の全容を読み解きたくなる、そんな不思議な魅力がにじみ出ているのです。そういう「想像させる」物語が好き、という私の好みも相当にあるかもしれませんが。
六つの物語の中で特に好きなのは「夜歩く者/剣駆る者」ですね。
シェロという少年が少年兵として参加した魔女狩り。しかし、それに疑問を持った瞬間に、一つの物語が始まる、という筋書き。
この物語の手に汗握る展開もさることながら、最後に付された「歴史」としての部分にぞくりとします。一体、この歴史に至るまでにシェロと彼の間に何があったのか。ステラは。そうやって、つい文章化されていない部分に考えを巡らせずにはいられないところに、これらの物語の面白さがあると思うのです。
そして、年表をざっと見て、最後の最後まで読んだ後、つい「まえがき」に戻って。
全身に走る鳥肌に気付くわけです。
彼女は本当に雲上に到達したのか。ハッピーエンドはそこにあったのか。
そんなことに思いを馳せずにはいられない、見事な構成でした。
また、前回の感想にも書きましたが、おそらく前作に当たる『世界再生の書物と一つの楽園』と同じ年表も、この物語を一通り追いかけると、また違った側面が見えてきます。
じわじわと輪郭が見えてくるような、逆に突き放されたような。
そんな「まだまだ読み足らない」という、尽きないわくわくを抱きながら本を閉じることができることは、きっと幸せなことなのだろうと思うのです。
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