アイレクスの走馬灯 - snow noise blind
【外套】
「……どうした?」
後部座席に上がってみると、いつ目を覚ましたのだろう、薄い毛布を被った鈴蘭がもう一つ小さくくしゃみをした。
「寒いんだな」
「だいじょぶ。ちょっと、目が覚めちゃっただけ」
全く信用できない。
それは、僕が鈴蘭を苦手にしているから、なんて下らない理由じゃない。毛布を握る手が、微かに震えていたのだ。確かに今夜はこの時期の平均と比べてもかなり気温が低い。寒くて当然なのだ。
「寒いなら寒いって言ってくれ」
「う、うん。でも本当にだいじょぶだから。心配しないで、ゆっくり休んで」
変なところで強情だ。何が一体「だいじょぶ」なのか、僕にはさっぱりわからないというのに。
このまま話していても埒が明かない。ここが町ならばすぐにでも防寒具を調達するところだが、とりあえず今は自分が着ていた外套を脱いで差し出す。
辺境向けに仕立ててもらったもので、体全体を覆えるほどに長く、防寒性は高い。その代わり動きやすさが阻害される欠点はあるが、今この瞬間は関係ない。
「僕のでよければ、使って構わない」
「え、でも、悪いよ」
「風邪でも引かれたらこっちが困るんだ」
「だけど、ホリィは寒くないの?」
「一晩くらいどうってことない」
寒くないといえば嘘になるが、そもそも、僕の体はそう簡単に体調に異常をきたすようには造られていない。相手がジェイならともかく、僕を心配するのは見当違いにもほどがある。知らないのだから、仕方ないとは思うけれど。
でも、と言いかけた鈴蘭に、外套を押し付ける。鈴蘭は目を白黒させながら外套を握って、持ち上げてみたり裏返してみたりと落ち着かない様子だったが、やがて何とか納得してくれたのか、肩の上から外套をかけた。
「それじゃ、お休み。僕は助手席で寝てるけど、何かあったらすぐ言ってくれ」
鈴蘭からの返事は無かったが、肯定と思って後部座席から降りようとした、その瞬間。
「えいっ」
突然腕を引っぱられた。
予想していなかっただけに、そんなに強い力でなかったにも関わらず、僕は呆気なく後部座席に引き戻されてしまった。
「何を……」
するんだ、と言いかけた僕の言葉を遮って、鈴蘭が素早く体を寄せてきたかと思うと、肩にかけていた外套で僕の肩を包んだ。
「どうせ寝るなら、一緒の方があったかいよ。それに」
呆然とする僕の横で、鈴蘭は……あくまで無邪気に笑っていた。
「君が寒そうだと、わたしまでもっと寒く感じるの」
これでは襲撃されでもした時、すぐに対応できないではないか。早く何か言い返さなければ、と思うのに、言葉が出ない。
僕がそうやって口をぱくぱくさせている間に、鈴蘭は「それじゃ、おやすみなさい」とにっこり笑って、僕に寄りかかるようにして目を閉じてしまった。
……こんな姿を見られたら、絶対にジェイに笑われてしまう。
思いながらも、寝息を立て始めた鈴蘭を起こすことなんて出来るはずもなくて。
僕はただ、ただ、寄りかかる彼女の重さと温もりを感じていた。
NEXT ≫ 未定
アイレクスの走馬灯 - snow noise blind
【一日目、夜】
ジェイと鈴蘭の他愛ない話を聞き流しているうちに、夜がやってきた。
辺境で、夜に強い明かりを炊くことは自殺行為だ。変異生物や夜盗に襲ってくれと言うようなもの。だから今日は道の端に車を止めて、一旦休むことにする。
軽い夕食を済ませた鈴蘭は、既に後部座席に横たわって寝息を立てていた。
車から降りると、先に降りていたジェイが傘つきのランプ片手にくつくつ笑う。
「図太い子だな。こんな場所でもよく眠ってるぜ」
「まあ、扱いやすくていいんじゃないか」
「ホリィ」
咎めるような声。僕自身あまりいい表現ではなかったと思う。ただ、どうしても僕はこの《種子》が好きになれそうになかった。
ここに来るまで、鈴蘭はずっと暢気に笑っていた。何がそんなにおかしいのか、僕には全くわからない。
わからないものは、僕をいちいち不愉快にさせる。
「鈴蘭はいい子だぜ。話してればわかる」
「別に、悪いとは言ってない。ただ、僕は……苦手だ」
「そうか? 案外気が合うと思うけど」
「何処が」
このまま話を続ける気になれなくて、話題を変えることにした。
「それよりも、力を持たない《歌姫》なんて、存在しうるのか?」
「あたしは知らないけど、《種子》の中には力に目覚めてないって奴もいるらしいぜ」
「……なるほど」
「ま、あたしらはそんなこと気にせず、鈴蘭を無事に運んでやればいい。そうだろ、仕事人間」
「当然だけど、仕事人間って呼び方はやめて欲しい」
「事実じゃねえか」
事実であることを否定はしない。する気もない。僕は兵隊になるべく造られたのだ、任務のために生きているのは当然のこと。ただ、それと「仕事人間」という呼び名を許せるか、ということは全く別の話だ。
とにかく、そこで面倒くさい話は終わってくれた。
今日はジェイが先に見張りをするというので、交代の時間まで睡眠を取るため、車の中に戻ろうとしたその時……
くしゅん、と後部座席からくしゃみが聞こえた。
NEXT ≫ 外套
アイレクスの走馬灯 - snow noise blind
【歌姫候補】
《歌姫》とは何か?
《種子》とは何か?
僕は正しい答えを知らない。知らなくてよいことだから。
僕が知っていることは、塔があらゆる手段を使って《歌姫》と呼ぶ子供を集めている、ということ。《歌姫》は生まれながらに不思議な力と小さな石、《種子》を持っていること。それ故に、《歌姫》候補もまた《種子》と呼ばれること。この、九条鈴蘭のように。
「どうしたの?」
突然、僕の視界を覗き込んでくる、大きな目。
窓の外を見てたはずの鈴蘭が、いつの間にかすぐ側に顔を寄せていて。びっくりする僕の前で、鈴蘭は首を傾げる。
「ずっと、こっち見てたから。わたしの顔何か変かな」
「いや、そういうわけじゃ」
「あ、もしかしてこれが気になった?」
人の話は最後まで聞け、と言われたことはないのだろうか。
そんなことを思う僕の前で、鈴蘭は突然左目を覆う眼帯の下に細い指を入れて、その下にあるものを僕に見せた。
当然、それは左目だ。けれど、そこに本来あるべき瞳孔は無い。まるで曇り一つないビー玉が、白目の真ん中に嵌め込まれているようだった。
光の調節器官を持たない左目を眩しそうに細めた鈴蘭は、すぐに眼帯を下ろした。
「変でしょ」
見えなくて不便なの、と言いながら、鈴蘭は何故か嬉しそうに笑っていた。
「これが《種子》なんだよね。今までただの変な目だと思ってたから、話を聞いてびっくりしちゃった」
「そういや、《歌姫》候補には不思議な力があるっていうけど、アンタはどんな力を持ってるんだ? ちょいと披露してくれよ」
運転席からジェイが声をかけてくる。確かに、塔から渡された資料にも、力のことは何も書かれていなかった。
すると。
「力……?」
鈴蘭は、首を傾げた。
「そんなの、わたし、持ってないよ」
NEXT ≫ 一日目、夜
青波は大概自分のやってることに対する自信が足らない。
一から十までとは言わないまでも、周りに迷惑かけない程度に何かでっかめなものが作れたら多少は自信がつくかなー、というのが最近の青波の悩みなわけですが。
(その一端がこの前の豆本)
それでも、ビジュアル面を考えてしまうと、どうしても人の手を借りずにはいられないんですよね……
高望みしすぎだ、って言われちゃえばそれまでなんですが、やっぱり自分の理想の姿をしてるキャラとかを見ると幸せじゃないですか!
……一番の問題は、その美麗グラフィックに文章が追いついてないことですねすみません。
というか、青波は早く自分が文章書きである自覚を持った方がよいのかもしれない。
文章それだけで勝負できないから、特に金銭の負担を課す本を作る時には、ビジュアル面とか装丁とかにこだわっちゃうって自覚はあるんですよ……(汗)
あ、でも装丁作るのはそもそも文章とかそういうの抜きで好きなんですけどね!
アイレクスの装丁考えてる時とかやたらたぎりましたもん!(笑)
まあ、そんなわけでまだまだ友人一同に頼るターンは続きます。
だって私が見たいんだ! 俺は自分の欲望に生きるぞ、JOJOーッ!
……すみません、こんな調子に乗ってる奴ですが、よろしくお願いします。(深々と土下座)
で、何でこんな話を始めたかって、青波の頭の中にまたアホな企画が湧いたからなんですが。
企画としては、青波一人で二年から三年かかりそうな企画。ただ、まあ高望みしない限りは一人で何とかなりそうな程度の。
……空色一段落して、まだやる気があるなら挑戦してみようかなあ。
でも空色が一段落するはずの一年後には忘れてる気がしますが!
というか、今まで五、六回は断念してきたネタなんで、また断念する気しかしないのがまた(笑)。
とりあえずは目下の目標四つくらいをこなしてから考えることにします!
色々自信喪失することもありますが、どんな状態でも、自己満足であろうとも、なんだかんだでものを作ることは止められませんね。
だって、作る工程それ自体が楽しすぎますもん。
一から十までとは言わないまでも、周りに迷惑かけない程度に何かでっかめなものが作れたら多少は自信がつくかなー、というのが最近の青波の悩みなわけですが。
(その一端がこの前の豆本)
それでも、ビジュアル面を考えてしまうと、どうしても人の手を借りずにはいられないんですよね……
高望みしすぎだ、って言われちゃえばそれまでなんですが、やっぱり自分の理想の姿をしてるキャラとかを見ると幸せじゃないですか!
……一番の問題は、その美麗グラフィックに文章が追いついてないことですねすみません。
というか、青波は早く自分が文章書きである自覚を持った方がよいのかもしれない。
文章それだけで勝負できないから、特に金銭の負担を課す本を作る時には、ビジュアル面とか装丁とかにこだわっちゃうって自覚はあるんですよ……(汗)
あ、でも装丁作るのはそもそも文章とかそういうの抜きで好きなんですけどね!
アイレクスの装丁考えてる時とかやたらたぎりましたもん!(笑)
まあ、そんなわけでまだまだ友人一同に頼るターンは続きます。
だって私が見たいんだ! 俺は自分の欲望に生きるぞ、JOJOーッ!
……すみません、こんな調子に乗ってる奴ですが、よろしくお願いします。(深々と土下座)
で、何でこんな話を始めたかって、青波の頭の中にまたアホな企画が湧いたからなんですが。
企画としては、青波一人で二年から三年かかりそうな企画。ただ、まあ高望みしない限りは一人で何とかなりそうな程度の。
……空色一段落して、まだやる気があるなら挑戦してみようかなあ。
でも空色が一段落するはずの一年後には忘れてる気がしますが!
というか、今まで五、六回は断念してきたネタなんで、また断念する気しかしないのがまた(笑)。
とりあえずは目下の目標四つくらいをこなしてから考えることにします!
色々自信喪失することもありますが、どんな状態でも、自己満足であろうとも、なんだかんだでものを作ることは止められませんね。
だって、作る工程それ自体が楽しすぎますもん。