目を開ければ、黄色いミルクキャラメルの箱が目の前にあった。
「ちょっと吃驚したぞ、ハル」
もちろん、キャラメルが自分で歩いたり空を飛んだりはしないので、いつの間にやら横に座っていたハルが、彼の目の前にキャラメルの箱をぶら下げているのだが。目を向ければ、ハルは普段通りのふわふわとしたつかみどころの無い笑顔を浮かべてみせる。
「だってセンパイ、呼んでも起きないじゃないですか。次の時間始まっちゃいますよ」
「眠いんだよ、勘弁してくれ」
やる気なさげにひらひらと手を振るセンパイに対し、ハルは大げさに頬を膨らませる。
「そんなこと言ってると、またダブっちゃいますよ?」
「そしたら退学して霊能力者としてでも売り出そうかね」
心にも無いことを言って、キャラメルの箱越しに空を仰ぐ。近頃は梅雨らしい陽気が続いていたが、今日は少しだけ晴れ間が覗いている。だからこそ、センパイも特等席である屋上で昼寝を決め込んでいたのだ。ハルも空を見上げて、「いい天気ですねー」とのんびりしたことを言う。
すると、予鈴のエリーゼが鳴り響いた。ハルは「はわっ」と慌てて立ち上がるが、
「ま、後から行くからマツモトに聞かれたらそう言っといてくれ」
「了解です。あ、これは差し上げますね」
ハルはキャラメルの箱をセンパイに手渡す。センパイは寝転がったままそれを受け取ると、古臭くも何となく懐かしいパッケージを眺めながら言う。
「お前が菓子持ってるなんて珍しいな。しかも何でキャラメルなんだ?」
「今日は、ミルクキャラメルの日だそうです。ミカさんが言ってました。それで、センパイにあげれば喜ぶよーって話だったんで」
「あー、はいはい、そういうことね。ありがとさん」
一体何が「そういうこと」なのかはわかっていないらしく、首を傾げるハルだったが、センパイは「早く行けよ、次の授業遅れるぞ」と手を振る。
「そうですね。センパイも、早めに来てくださいよ」
「気が向いたらな」
気の無い返事ではあったが、それもいつものことではあったのでハルは「それじゃお先に」と言ってスカートを揺らし、屋上を後にした。
一人残されたセンパイは、キャラメルの箱を振る。かたかたと乾いた音がするところを見ると、ハルとミカが一つずつつまみ食いした後じゃないかと推測される。
「ハルはともかく、ミカはわざと食ってやがんな……」
ハルにわざわざ「ミルクキャラメルの日」なんてマイナーな話を振るのだ、わかってやっているに決まっている。とはいえ、今日のことを覚えていたのは流石に全ての情報を把握しているミカなだけはある。
「……ま、折角ですから美味しくいただきますかね」
センパイはミルクキャラメルの箱を顔の上にかざして、ほんの少しだけ笑う。
今日も『エリーゼのために』のメロディに乗せて一日が過ぎてゆく。ゆっくりと、いつも通りに。
・・・・・・・・・・・・・・・・
六月十日は森永の策略によりミルクキャラメルの日です(笑)。
「ちょっと吃驚したぞ、ハル」
もちろん、キャラメルが自分で歩いたり空を飛んだりはしないので、いつの間にやら横に座っていたハルが、彼の目の前にキャラメルの箱をぶら下げているのだが。目を向ければ、ハルは普段通りのふわふわとしたつかみどころの無い笑顔を浮かべてみせる。
「だってセンパイ、呼んでも起きないじゃないですか。次の時間始まっちゃいますよ」
「眠いんだよ、勘弁してくれ」
やる気なさげにひらひらと手を振るセンパイに対し、ハルは大げさに頬を膨らませる。
「そんなこと言ってると、またダブっちゃいますよ?」
「そしたら退学して霊能力者としてでも売り出そうかね」
心にも無いことを言って、キャラメルの箱越しに空を仰ぐ。近頃は梅雨らしい陽気が続いていたが、今日は少しだけ晴れ間が覗いている。だからこそ、センパイも特等席である屋上で昼寝を決め込んでいたのだ。ハルも空を見上げて、「いい天気ですねー」とのんびりしたことを言う。
すると、予鈴のエリーゼが鳴り響いた。ハルは「はわっ」と慌てて立ち上がるが、
「ま、後から行くからマツモトに聞かれたらそう言っといてくれ」
「了解です。あ、これは差し上げますね」
ハルはキャラメルの箱をセンパイに手渡す。センパイは寝転がったままそれを受け取ると、古臭くも何となく懐かしいパッケージを眺めながら言う。
「お前が菓子持ってるなんて珍しいな。しかも何でキャラメルなんだ?」
「今日は、ミルクキャラメルの日だそうです。ミカさんが言ってました。それで、センパイにあげれば喜ぶよーって話だったんで」
「あー、はいはい、そういうことね。ありがとさん」
一体何が「そういうこと」なのかはわかっていないらしく、首を傾げるハルだったが、センパイは「早く行けよ、次の授業遅れるぞ」と手を振る。
「そうですね。センパイも、早めに来てくださいよ」
「気が向いたらな」
気の無い返事ではあったが、それもいつものことではあったのでハルは「それじゃお先に」と言ってスカートを揺らし、屋上を後にした。
一人残されたセンパイは、キャラメルの箱を振る。かたかたと乾いた音がするところを見ると、ハルとミカが一つずつつまみ食いした後じゃないかと推測される。
「ハルはともかく、ミカはわざと食ってやがんな……」
ハルにわざわざ「ミルクキャラメルの日」なんてマイナーな話を振るのだ、わかってやっているに決まっている。とはいえ、今日のことを覚えていたのは流石に全ての情報を把握しているミカなだけはある。
「……ま、折角ですから美味しくいただきますかね」
センパイはミルクキャラメルの箱を顔の上にかざして、ほんの少しだけ笑う。
今日も『エリーゼのために』のメロディに乗せて一日が過ぎてゆく。ゆっくりと、いつも通りに。
・・・・・・・・・・・・・・・・
六月十日は森永の策略によりミルクキャラメルの日です(笑)。
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