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懐かしい文面を見つけた。
ので、載せてみる。

「シトラスムーン・ドリミンガール」の元ネタとして、前に企画倒れしたDX2セッション「イエローバード・ハッピーケージ」についての文面ですね。
やっぱり「夢を叶える」という目的のために、己の心を形にした「武器」を手にして不可思議な舞台に集った「参加者」たちが、「管理者」と呼ばれる存在が与える「ゲーム」をクリアしていくことで己の夢に迫っていく、という話でした。
DX3でやろうと思った時期もあったにはあったんですが、今はとりあえずセッションが色々多すぎるんで自重中。むしろDX3やるならまず「栗鼠DX」をやりたい(過去ログ参照)。

で、この話になるのですが、シトラスにも出てきてるイーグリットって人が元々「ゲーム」の参加者ではあるのですが今は夢を諦めるような形で管理者の手下として働いていて、トンボという人が「ゲーム」の参加者でありながら積極的に動こうとしない、所謂プレスト的立場の人という設定になっています。
しかも地味に話は「ロンリームーン・ロンリーガール」にもイメージ的に繋がっていて、ということで実はイエローバードってのはこの辺に密接に関わってきた「元ネタ」なわけです。
トンボが実はロンリームーンの彼だとかね。

それを踏まえて以下どうぞ。

※現在「シアワセモノマニア」で公開している物語群とは全く関係ありません。
 パラレルなストーリーとしてお楽しみ下さい。
 
 
 Tビルに住みついた男は、トンボと呼ばれていた。
 『水鏡の城』とも称される、情報屋である。彼の持つ『武器』はノートパソコンの形をしていた。その形状からわかるとおり、彼の武器は全くもって戦闘には向かず、本人もそれを誰よりもよく理解しているため『ゲーム』参加へのモチベーションはあまり高くない。
 彼が何を望み『鳥籠』に囚われたのかは誰も知らないが、現在のトンボの行動を見る限り、自らの望みを積極的に叶える気はないのではないかと噂されるのも当然だった。
 ただ、逆に言えばゲームに参加しないということは誰の味方になり、敵になるわけでもないということである。故に参加者は絶対中立であるトンボの武器と彼自身が持つ情報を頼り、いつしかその名を鳥籠中に広めることになっていた。
 が、ある時を境に彼は自らゲームの攻略に乗り出すことになる。
 そのきっかけを知る者は、ほとんどいないと言われている。
 
 
 Tビルに足を踏み入れたのは、顔の右半分に火傷を負った女だった。女は長く伸ばした髪を揺らして、荒れたビルのエントランスに入る。その途端、声が響いた。
『「管理者」の腕が何の用です、イーグリット?』
「……お前と私とは初対面のはずだが?」
 イーグリットと呼ばれた女は虚空に目を向けて髪をかきあげる。声は淡々と言った。
『私は知っています。話があるなら上まで登って来てくれませんか』
「言われなくとも」
 イーグリットは目の前にあったエレベーターを一瞥したが、電源は入っていなかった。仕方なく、階段で登ることにする。ビルとはいえ、あまり大きな建物ではなく全四階の構造であり、一階一階もそう広くない。
 元々、このTビルは鳥籠の中でも誰かが拠点にすることもなく、廃墟となっていたビルの一つだった。だからこそ、トンボと名乗るその男が自らの拠点に選んだのだろうが。
 一歩一歩。所々が壊れかけた階段を昇っていくイーグリットの足取りは、慎重なものだった。
 先ほどの声からもわかるように、相手はビルの中にいるイーグリットの動きを、『見ることなく』把握している。それが、あの男の武器であり能力だということは、イーグリットとて知らないわけではない。
 ここは、相手の体内と言っても、過言ではないのだ。
 四階まで登ったところで、階段の前にあった扉を開く。すると、やけに広い窓のある部屋が広がっていて、そこに打ち捨てられていたのだろう大きな机の上に、一人の男が座っていた。
 男はノートパソコン型の武器……『グリモア』から目を上げた。おそらく通称の由来なのであろう分厚い眼鏡の下から、鋭い瞳がイーグリットを射る。この鳥籠で外見について語るのは無意味であるが、ひとまず年齢は二十歳そこそこに見えた。
 男……トンボは机から降りようともせず真っ直ぐにイーグリットを見据えて言った。
「初めまして、イーグリット。私を訪ねてきたということは、何か情報が入用で?」
 イーグリットが口を開こうとしたが、それを遮るようにしてトンボは言った。
「まあ、私は参加者ですので、管理者側から何か働きかけられても困りますがね。管理者側に与えられるような情報はありませんし、あなたのように、管理者の腕になるつもりもない」
「勿体ないな、それほどの武器を持ちながら」
「それ故に、ですよ。私はあくまで参加者、管理者のゲームに勝って、望みをかなえるためにここにいる」
 トンボは笑いもせずに言った。イーグリットは頑なにゲームに参加しようとしないトンボの噂も聞いていたため、「よく言うよ」と言おうとしたが……ここに来た目的を思い出して言った。
「その件だ。お前、今回のゲームにエントリーしたらしいな。何故、今になって?」
「今までのんびりしすぎましたから、と言いたいところですが」
 トンボは言いながら、『グリモア』に再び視線を落とす。
「少し、この鳥籠に気になる動きがあるので」
 イーグリットは無言ながら内心舌を巻く。
 この男は、気づいているのだ。鳥籠と管理者……そして参加者に生まれつつある変化に。それは本当に僅かな変化に過ぎなかったが、きっとトンボはその僅かなきっかけでも何かを掴み取るだろう。
 トンボのことをさして知るわけでもないイーグリットだったが、イーグリットとて鳥籠の中では古参の参加者であり、今は管理者の腕。トンボの目に宿る光にはただならぬものを感じていた。
「……なら、気をつけることだな」
 だからこそ、イーグリットは言う。
「お前と『グリモア』はゲームの参加には向かない。下手に外で動けば『ノーネーム』に喰われるぞ」
「何、武器は使い方ですよ」
 トンボは言って『グリモア』を閉じる。
「それより、わざわざ忠告しにきてくれたのですか、貴女は」
「まあ、そんなところだ。できれば協力を仰ぎたいと思っていたが、どうやらそれは叶わないようだからな」
「ご期待に沿えず申し訳ない」
 さっぱり申し訳ないとは思っていないような口調で言って、トンボは小さく頭を下げた。イーグリットも元より期待はしていなかったため、ひらひらと手を振って……それから、ぽつりと言葉を落とす。
「なあ、これは私の個人的な興味なんだが……お前は、自分の望みを積極的に叶える気はないように見える」
「それはそうです」
 トンボは眼鏡の下で目を閉じた。
「ささやかな望みですから、誰かの望みを蹴ってまで叶えたいとも思っていません」
 それは、イーグリットにとっては不思議としか思えない答えだった。
 何しろこの鳥籠に囚われるのは強い望みを持った者だけ。何よりも叶えたいと思うことがなければ足を踏み入れることも不可能なはずだ。だが、この男はあまりに自らの望みを叶えることに対して執着がなさ過ぎる。
「……お前の望みは、何なんだ? 答えられなければ構わないが」
 それは、逆に言えば「ここにいる理由」だ。鳥籠にいる人間はほとんどがそこに複雑な思いを抱えている。普通ならば答えてもらえるとも思っていなかった。が。
「何、本当にささやかな願い事です」
 イーグリットの想像に反して、大きな窓を背にトンボは唇を開く。
「私の望みは、『Fly Me to the Moon』」
 ――私を月まで連れて行って。
 そう言ったトンボは窓の外に浮かぶ大きすぎる月を背に、微かに、笑っていたようにも見えた。
「自分で叶えなければ意味のない、望みです」
 
 
 それは、月が今よりずっと近くなった時代の、話。
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2011/02/09 21:17 | Comments(0) | 小説断片

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