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Twitter300字SS「人形」
「人造霧航士? 翅翼艇を飛ばすためにわざわざ人形を作るなんてナンセンスだよ。
 人間は確かに他のモノにはない、多くの機能を備えている。でも、ただ一つの機能を求められた場合には、酷く不格好なシロモノだ。
 無駄ばかりだよ、人間なんて。ボクがもし『飛ぶ』ためのカタチになれるなら、この腕を、足を、内臓を、何もかも削ぎ落としても構わないよ?
 だから、ボクは人造霧航士には賛成できない。人形を作るくらいなら、魂魄を宿した翅翼艇を作った方がよっぽどいいと思うけど。それこそ帝国の『戦乙女』みたいにね。
 ああ、でも、下手なカタチに人間の魂魄を繋いじゃうと自我が崩壊しちゃうんだっけ。嫌だな、人間ってなんて不自由なんだろう!」
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Title: トレヴァー・トラヴァースの主張
 
 
 人造霧航士セレスティアは女王国海軍の「備品」だ。
 体の組成は人間と変わりなく、魂魄も同じく。それでもセレスは人ではありえない。よくできた人形。それが軍本部『時計台』による人工霧航士の定義だ。
 別に、セレスはその扱いに異を唱える気はない。与えられた命令を遂行する人形。それでよい、と思っているけれど。
「セレス、行けるな!」
 魂魄に叩き込まれる声。霧を見通す視界は、既に敵機を捉えている。セレスは翅翼艇『エアリエル』に重なる魂魄を意識して、頷く。
「行けます」
「オーケイ。なら、好きに飛べ!」
 好きに、だなんて。いつも相棒の言葉は「命令」には程遠い。セレスはこそばゆさに微かに口の端を歪め、青の翅翼を閃かせる。
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Title: セレスティアの在り方


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2018/03/03 22:03 | 小説断片
Twitter300字SS「試す」
今日も俺は試行する。
 飛び方は相棒を通して誰よりも知っている。誰よりも確かに記憶している。
『エアリエル』との同調の感覚、耳に響く風の歌、青い翅翼を広げて陸に別れを告げる瞬間だって。
 けれど、俺が相棒を模倣したところで、俺の魂魄は『エアリエル』とは同調できない。普段相棒と同化して軽々と海を舞っているそいつは、あまりにも重く、あまりにも不自由で、地を這ってるのとほとんど変わらない。
 それでいいのだと相棒は笑う。飛ぶのは俺で、霧を見通すのがお前だと。
 それでいいのだと俺も思う。観測と演算が俺の仕事だと理解もしている。
 理解していながら、俺は試行を重ねる。
 自由に飛ぶ翼に憧れることくらいは、自由だろう?
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Title: オズワルド・フォーサイスの試行
 
 
 時々、相棒は『エアリエル』を飛ばそうと試みる。
 何も『エアリエル』はじゃじゃ馬ってわけじゃない。翅翼艇の中でも、素直さなら随一だ。だから、霧航士なら誰だって「飛ばす」ことはできる。
 でも、それは相棒を除いた話だ。
 相棒は飛べない。翅翼艇を操る才能がない。こればかりは生まれつきの適性の都合。だから相棒の何が悪いわけじゃねーことは、俺もよくわかってる。
 ついでに、相棒が、俺がわかってることを、わかってないはずがない。
 それでも相棒は試行を止めない。誰が無駄だと笑っても『エアリエル』を飛ばそうと試みる。
 俺様はそれを笑わない。笑う理由がないから。
 だって、飛ぶってのは、それだけ気持ちいいことなんだから、さ。
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Title: ゲイル・ウインドワードの所感



2018/02/03 23:05 | 小説断片
「例えば」
「俺が飛べたなら。お前の手を煩わせなくて済んだのかな」
「それでも、二人で翼を並べて飛んでたんじゃねーかな」
「どうして?」
「俺様が、お前と飛びてーからだよ。決まってんじゃねーか」
「俺と……」
「それで、二人で好き勝手飛んで、とっくに蒸発してんじゃねーかな」
「ああ、なるほど」
「だから、俺様はこれでよかったと思ってる。お前は歯がゆいだろうけどさ」
「いや」
「ん?」
「俺も、今の在り方は、別に嫌いじゃない」
「そっか」

2016/12/05 20:22 | 小説断片
Twitter300字SS「月」

 相方は今日も絵筆を握り、カンヴァスと向かい合っていた。
 霧の無い空を夢に見るという変わり者は、俺の知らない景色を描き出す。限りなく黒に近い紺色の空、空の色を映して揺れる水面。そして、
「なあ、これ何だ?」
 空の真ん中に、白銀に輝く真円。内側には不思議な模様が見て取れた。
 相方は筆を止め、紫水晶の目を向けて。
「さあ? 見えたとおりに描いてるだけだから」
 それはそうか。相方が夢に見るのは霧の向こう、誰も知らない空。そこに浮かぶ円盤の名前なんて、お互いに知るはずもない。
 唯一、俺に言えることがあるとすれば。
「綺麗だ」
 俺の言葉を受けて、相方は、少しだけ口の端を歪ませた。
「お前にそう言ってもらえるなら、本望だ」
 
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Title: 月


2016/10/01 21:00 | 小説断片
Twitter300字SS「訪れ」

 全く、面倒くさいことになったものだ。
 俺の顔が怖いのはいつものことだが、ここ数日で、ただでさえ消えない眉間の皺が更に数本増えてしまった。
 俺の目には、お化けや妖怪、つまり「異界からの来訪者」が見えている。
 それは生まれつきなので仕方ないし、今の問題はそこじゃない。
 普段はお互い不干渉を貫くひとでなし連中が、何故か近頃になって、代わる代わるに俺を脅かそうとしてくるのだ。
 隙あらば訪れるそいつらを小突いて追い返すのにも疲れてきた頃、来訪者業界に詳しい上司がいい笑顔で言った。
「最近、賭けになってるそうですよ。いかなる時も仏頂面を崩さない君を、誰が最初に脅かすかって」
「そんな賭けとっとと止めさせてください」

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Title: 北風と太陽みたいなやつ




2016/09/03 21:00 | 小説断片

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