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2024/05/19 09:51 |
読書記録:『概念部 1巻』
『概念部 1巻』
著者:伊織 さま、相沢ナナコ さま
サークル:兎角毒苺團
ジャンル:現代学園もの?

サークル「兎角毒苺團」は、とにかく机上の配置や装丁がいつも美しく、いつも立ち止まっては見とれてしまいます。不思議の詰まった玩具箱のような、そんな印象です。
進化する本『ドラゴナイト擬典』もこの前の超文学フリマで始めて手にとってみたのですが、本当に素敵な発想だなあ、と惚れ惚れしてしまいます。木の表紙に、一部が焦げおちたような紙。中身はほとんど読めなかったのですが、一度じっくり読み込んでみたいです。

今回は、その中でひときわシンプルな表紙が目を引く『概念部』という本を購入させていただきました。
黒地に校章(ですよね?)の金色のスタンプが映える本。そして、購入したら「部外秘」というスタンプが押された封筒をいただきました。

物語は、文化系部活がやたら強い学校、私立文聖学園高等部が舞台。その中でも「概念部」と呼ばれる不思議な部活に所属する、部長、副部長、桜井の三人を中心とした物語が二編、収録されています。どちらも、不思議な場所で途切れていて、二巻に続く形になっているのでしょうか。先が気になります。
(封筒の中にもう一編、何とはなしに不穏さを漂わせるお話が入っていましたが、部外秘なのでここでは割愛)

一編目「シュレディンガーの歯車」は、不思議な味わいの一編。
部長・神戸が迷い込んだ奇妙な世界と、彼に起こった出来事の発端……なわけですが。果たして、これはどう展開するものなのでしょうか。そして、明らかにおかしな事態に巻き込まれているのに落ち着き払った部長と、そこにいる人々との噛み合ってるような噛み合ってないようなやり取りに、ふっと肩の力が抜けます。
これから一体どう物語が転がっていくのかと、やきもきして仕方ない一編でした。

二編目「私立文聖学園概念部・学園祭の波紋」は学園祭の一日目を舞台にしたお話。
入れ替わり立ち替わり入ってくる文化部の面々の描写がとにかく愉快。個人的にはBL部の部長にニヤニヤして仕方ないです酷いなこいつ。
何だか、自分も文化系がそれなりに強い上に、謎の部活に所属していたので(この物語の中では「一次創作部」と「卓上ゲーム部」を足して二で割ったものと考えるのが近い)、すごくこの景色を懐かしいなあ、と思いながら眺めてしまいました。いちいち献本を受け取る七尾氏の態度もまたよいのですよな……。
そして、ついに登場した『概念戦闘』。これは……酷い……!(笑) いやまあ、相手が相手だからなのですが、これ、実際に戦闘ルールを理解している者同士だとどんな戦いが繰り広げられるのでしょうか。その描写が楽しみです。
封筒の中身も含めての感想なのですが、何とはなしに、文化祭の風景の中にもかすかな摩擦が溶け込んでいて。それらがこれからどう発展していってしまうのか。続きが楽しみです。
あと「いつでもシーフ/ガンスリンガーとブラムストーカー/バロールのクラスは空けていますので」っていう卓上ゲーム部長の台詞に不覚にも吹きました。絶対からめ手キャラだこれ……。

軽快な筆致に導かれ、少年たちの喧騒に懐かしい気分にさせられる、そんな二編。
続きが楽しみなのですが……二巻は存在するのでしょうか。この前は卓上になかったような気がするのですが……。気になります。とても気になります。
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2013/05/17 22:09 | 読書記録
読書記録:『プラネット・カラーズ 1』
『プラネット・カラーズ 1』
著者:鶴屋司 さま
サークル:デンタルカーオブソサイエティー
ジャンル:SFファンタジー

COMITIA104で事実上お隣(お隣が欠席だったのです)で、うちの怪しいペーパーと交換でいただいたペーパーの素敵なキャラ紹介を見て、ときめいたあまりに一巻を購入していました。

「小さき神と少年の、星を救う「行進」の物語」と銘打たれた(この文句がまたきゅんと来ます)この小説。
一度の滅びを迎え、〈腐れ渦〉と呼ばれる現象によって完全なる滅びに向かいつつある惑星に降り立った、少女の姿をした神――「千年ツグミ」マシェルと、「千年ツグミ」を描いた旗を掲げる「戦旗の守護者」たる少年クロの、「惑星再生」の旅を描く物語です。
現在、四巻まで刊行中(ブログ見る限り)。

まずは、滅び行く世界の絶望感に打ち震えます。
何処までも広がる荒野、かつての文明の名残を残す品々……交通標識には思わず笑いましたが。
とにかく、地に根付いた神ですらその滅びに身をゆだねてしまうほどの、圧倒的な滅びのイメージが余すところなく描かれています。
そこにはもはや、人も神もなく。ただ、腐り落ちていく未来だけしか見えない。

だからこそ、指揮杖を振りかざすマシェルと戦旗を掲げるクロ、そしてマシェルが率いる「軍勢」による行進が、鮮やかに目に焼きつくのかもしれません。
彼女たちの「行進」は、腐った大地や命を浄化し、再生させるためのもの。
そのために、マシェルは凛と声を張り上げ、指揮杖を振るうのです。
他の誰がその行進を支えてくれるわけでもない。それでも、マシェルはクロと共に行進を続けていく。大切なものを少しずつ失いながらも、マシェルは前に進むのをやめないのです。
その真っ直ぐさが、読んでいるこちらの胸まで締め付けてやみません。
老いた神、珊瑚の王スラズ・マリーツァの前で見せた、一つの再生の風景。それはまだほんの小さな芽吹きでしかないけれど、彼女が目指す色鮮やかな世界の一端を見せ付けられて、自然と涙がこぼれました。

そして、そんなマシェルに寄り添うクロのあたたかさも忘れてはなりません。
突っ走りがちなマシェルの首根っこを掴み、時には一緒に走り、彼女の体を支えて立つ守護者。
マシェルだけでは決してなしえない行進。だからといって、クロ一人がいても意味が無い。
指揮棒杖と戦旗、二つで一つ。その繋がりを感じさせるやり取りがとてもよいのです。

あと、いちいち「小さい」って言葉に反応するマシェルがとても可愛いです。
言ってないのに反応するところとか、とても愛しくなります。

旅の中、謎めいた少女アーヤと出会い、少しだけ賑やかになったりもして。
(その時のマシェルの反応もまたすごく可愛らしいのです……マシェル可愛い)
この行進が、一体どのような結末を迎えるのか。
次に機会があれば、是非続きを手にとってみたいと思っております。

2013/05/12 12:28 | 読書記録
読書記録:『猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る』
『猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る』
著者:大和かたる さま
サークル:宝来文庫
ジャンル:現代ファンタジー

こちらも「創作文芸見本誌会場 Happy Reading」さんで見かけて気になっていた一冊。

『東京弁天シリーズ』と題されたシリーズの一冊で、「中学一年生の弁才天」であるアヤメさまにまつわるお話、『猫と弁天』『アヤメさま、宝船に乗る』の二編を収録した本になります。
表紙がとてもかわいらしく、目を引きます。猫如来さまの貫禄がとてもよいです。

冒頭の、語りに近いほんわかした文章に惹かれて読み始めたのですが、読み終えたときにはかなり印象が変わっていた、不思議な一冊でした。
確かに、語り方はとても優しく、またアヤメさまが等身大の少女でありながら、「神様」としての意識も持ち合わせた存在として鮮やかに描き出されていて、そのユーモラスさがとてもほほえましく感じられます。
猫を追いかけて町を行く、琵琶を抱えたセーラー服の中学生ですよ。そのヴィジュアル的なかわいらしさも相まって、頬が緩んで仕方ありません。
全編を通した空気感は、現代のおとぎばなし、といった印象です。
個人的には『猫と弁天』の中で登場する、髪飾りの一文がすごく印象的でした。さすが神様……。

ただ、描かれているエピソードは決して優しいだけではなく、例えば『猫と弁天』では現代を生きる人々の勝手さや、アヤメさまの存在に隠された悲しいエピソードが。『アヤメさま、宝船に乗る』でも、苦しむ人々の姿や、人を守るために傷つく神々の姿まで、克明に表現されています。
それが、「平成生まれの」純真で未熟な神様であるアヤメさまの目を通して描かれるだけに、アヤメさまが感じる悲しみ、行き場のない怒り、無力感が、やわらかな文章の中からもはっきりと、痛いほどに伝わってくるのが、とても印象的でした。
それでも、そんなアヤメさまをあたたかく受け入れている「姉」のサクラさまや、口は悪くて荒々しいけれど、アヤメさまに神様としての心構えを示してくれる毘沙門さまなど、彼女を取り巻く神々が、アヤメさまを見守ってくれていることに、心から安堵します。
そして、彼女のような新しい神様が、いつも笑っていられるような……それこそ、境内でのんびりと猫如来さまと戯れていられるような、そんな世界になればいいなと、祈らずにはいられませんでした。

どうやら、アヤメさまにまつわるお話はこれで終わりではないようなので、続きを楽しみに待ちたいと思います。
ほんわかしているようで、どこかがきゅっと引き締まるような、そんな素敵なお話でした。

2013/05/06 15:20 | 読書記録
読書記録:『ウィスタリア(上)』
『ウィスタリア(上)』
著者:藍間真珠 さま
サークル:藍色のモノローグ
ジャンル:シリアスSFファンタジー

本当は完結してから書いたほうがいいのかなと思ったのですが、
(実際先行しているサイト掲載分は、そろそろ完結みたいですし……)
とりあえず「読んだその時に書く」をモットーに、今の時点で一旦記録しとこうと思います。
ちなみにサイト掲載分は未読です。多分これは本で一気に読んだ方がよさそうなので……。

住んでいる場所は離れているのに、何故か一ヶ月に一回くらいリアルにお会いしたりすることもある、藍間真珠さんの長編です。
いやまあ、藍間さんにとっては長編のうちに入らないのかもしれませんが(をい)。
藍間さんの、執筆を始めてから終わらせるまでのペース配分は是非見習いたいところです。

謎めいた小国ニーミナの中心部、「教会」と呼ばれる場所に潜入した青年ゼイツと、彼が出会った不思議な女性ウルナを中心に、『禁忌の力』やニーミナで信仰される「ウィスタリア教」の謎を織り交ぜて送る、SFファンタジーです。
上記だけだとファンタジーっぽく見えますが、拳銃が古代の遺物だったり、明らかな近代・現代兵器が「遺物」として登場したりと、どう考えてもポストアポカリプスものの様相を呈しております。
そしてそれらは、世界の住人にとってはそれなりには「一般常識」のようです。あまりにもそれらの情報がさらっと出てきてびっくりしました。(それは自分がいつも「過去が極端に隠蔽された」話を書いてるからだろ)
とはいえ、当然ながら謎めいた部分も多く、それらの「謎」に引き込まれるようにして、何も知らされないままにほとんど「別世界」である教会に放り込まれたゼイツと共に、ニーミナの奥に潜むものに迫ることになります。

とにかく世界観にきゅんと来ますね。数度の「下らない」戦争を経て、滅びに向かっていく世界。
当時の武器が過去の遺物となり、今に生きる人々はそれを研究しつつ、なおも武器として利用して。
そしてところどころに登場する「宇宙船」の影に興奮が隠せません。
本当に自分はこういう「一度滅びてなお滅び行く世界」大好きだなあ、と思いますが好きなんだから仕方ありません。
そしてそれらの情報が、さらりと、当たり前のように与えられるのがまた洒落ていると思うのです! ですよ!
冒頭から銃を「遺物」と言いきったところでドキッとするあたり、本当に好きなんだなあと。

物語はこの本の上では中盤のため、まだ全容が見えてはいないのですが。
「教会」のゆったりとした、しかし何とはなしに不穏なものをはらんだ空気感がとてもよいです。
時々登場する「紫の花」――タイトルにもあるウィスタリアの鮮やかさと香気が、謎めいた雰囲気を彩っています。
そんな、閉ざされた世界の中で、秘密を握るヒロイン、ウルナの危うい存在感が際立ちます。
ああいう「危うさ」はとてもよいものです。助けを求めるでもなく、己のなすべきことに囚われた、あのたたずまい……。胸がきゅんとします。これはゼイツでなくとも意識せずにはいられません。
それと、『姫様』ことルネテーラも、ものすごい存在感ですね……。上巻では登場する回数自体はそこまで多くない気がしているのですが、その無邪気さ、純真さと、彼女自身が抱えている(と思われる)もので、この世界の光と影をくっきりと見せ付けているような。
そんな一筋縄ではいかない人々を前に、ゼイツがどう未来を見出していくのか。
今から続きが楽しみで仕方ないです。

おそらく、続きは今年中には刊行される予定……でした、よね?
わくわくしながら続きを待ちたいと思います。

2013/05/01 22:02 | 読書記録
読書記録:『楽園の子供達 ~chapter phoenix / chapter siren~』
『楽園の子供達 ~chapter phoenix~』
『楽園の子供達 ~chapter siren~』
著者:志水了 さま
サークル:秋水
ジャンル:ゴシックロマン・ファンタジー

超文フリの戦利品読書週間と思ったらそんなことはなかったぜ。
読みたいものを読みたいときに読む、それが青波零也というナマモノであります。

というわけで、以前から表紙のお洒落さが気になっていて、
この前のコミティアでついに入手してしまった『楽園の子供達』シリーズを読破いたしました。
ジャンルはひとまずあとがきに従ってみました。

とにかく表紙の雰囲気が大好きです……ああいう二色刷りはロマンですね。
(chapter sirenは箔押しなのですが、この箔押しの使い方もまたとてもお洒落)
あと紙の手触りが……とてもよいです……。
作者さんのブログ見てみたら装丁にかなりのこだわりのあるお方のようなので納得。
装丁大事です。本当に。

内容としては、「ある事件により閉鎖、隔離されてしまった魔法学園。そこに取り残されてしまった生徒たちのサバイバル生活」、といったところでしょうか。
その原因となった事件のきっかけがあやふやであったり、生徒によって持っている情報が違ったりと、謎と疑念の種があちこちにばら撒かれていて、閉鎖空間スキーな私にとっては、とても美味しいお話でした。
それと、地水火風の四属性を基本とした生徒たちの魔法の描写、また魔法の「組み立て方」、魔法同士の相性など、古参ゲーマーとしてはにやっとします。また、それらの本来「馴染みない」情報を、物語を通して当たり前のものとしてすんなり飲み込ませてくれる腕前は、ファンタジィ書きとして見習わせていただきたいものです。
これらの前提があってこそ、chapter sirenの方で提示される「重要なこと」が、本当に一つの重要な情報として頭の中に飛び込んでくるわけなのですが。フレデリック……。
そんなわけで、以下はchapterごとの感想です。

【chapter phoenix】
火のグループの「三番手」アレンを中心とした第I話、
そして火のグループリーダー、シエラの視点による第II話の二本立て。
前者は学園内に存在する魔物とのバトル描写が中心。
このバトル描写が
その中で、時折織り交ぜられる「過去」から、アレンの抱いているものが見え隠れするわけですが……何か、フェニックスの人たちは(シエラの話も通して読んだ感想として)、表面的にはともかく、胸の内側に確かな熱いものを秘めた連中、という印象です。
力強くて、だからこそ、命短いような。やはり炎というのはそういうものなのでしょうかね……。

そして、すごく個人的な感想として、ノイスターがかわいいです。とても。
先輩たち二人と、強大な敵を前にして、折れるどころか奮起する一生懸命な女の子、っていいですよね……いいですよね……!
あと風魔法使いが好き、っていうあまりにも個人的な趣味嗜好もあります。

【chapter siren】
こちらは水のグループのお話。
研究者気質の少女ジェイミーの視点を中心とした「表」、
そしてchapter phoenixにも登場したカインの視点を中心とした「裏」の二本立て。
これがまたぞくっとするくらい、上手い作りになっております。表裏一体、という言葉が相応しいというか。
表で出てきた要素や彼女が目にしてきた出来事が、裏で発生した一つの事件を通して、最後の二ページに収束していく過程に唸らされました。
美しいもの。輝いて見えるもの。カインにとってのジェイミー。それを「守ろう」とするカインの決断。
「僕達のグループは狂っている。それは僕達皆が知っている事実だろう?」……そう言い放つ、水のグループリーダー、フレデリックの底の見えない雰囲気、息継ぎも許されない気配が、この物語全体を包み込んでいる気がしました。

とりとめのない感想ではありますが、とても面白く拝読させていただきました。
この学園に生きる、他の生徒たちの物語も是非目にしてみたいと思いました。
そして、学園に起こった出来事の真実と、彼らの行く末も。
そんなことを思いながら、こっそり追いかけていこうと思っております。

2013/05/01 14:20 | 読書記録

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