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2024/04/26 22:46 |
読書記録:『EDまで病むんじゃない2』
『EDまで病むんじゃない2』
著者:こくまろ さま
サークル:漢字中央警備システム
ジャンル:不条理ゲーマーブラックコメディ
 
ジャンルは自分が勝手にそう思っているだけですが、多分大体こんな感じです。
実は以前こっそり前作にも感想を書いていたりします。

ゲーマーでなくてもおそらく不条理っぷりに引きつった笑いを浮かべ、ゲーマーなら尚更そのゲーマーとしてのカルマに頭を抱える、そんなゲームに関するコメディの第二巻です。
もちろん、前回に引き続き新旧ゲームの小ネタも満載。今回も本文に出てきた用語や台詞のネタ解説リストもついてまいりました。このリストを小説と並べて読むのが前回からの楽しみであります。知っていれば「やっぱり」とにやりとし、知らなくても「こんなのもあるのか」とにやりとせずにはいられません。
ひとまず私は「俺は悪くねえっ! 俺は悪くねぇっ!!」にむせました。そこでその台詞は卑怯。

さて、ストーリーですが、前回もまあとことん酷かったのですが、今回はある意味それに輪をかけて酷いことになっております。
この話に関しては「酷い」は褒め言葉であると信じてやみません。
初っ端から怪しいにもほどがあるレースゲームとシューティングゲーム。
そして、何故シ○シティみたいになってるんですか、恋愛シミュレーションゲーム……?
しかも恋愛ものなのに対戦モードもありまして、今回はその「対戦」が最大の見所となります。
相変わらずゲーム内ヒロインが最低です。最低どころか人としてクズです。巫女ってどういう職業でしたっけ。
しかしそんなヒロインを落とすゲームにはまってしまった新担任(いい女)にほいほいついて行ってしまった主人公ネッキー。
そりゃあ、ろくなことになるはずがありません。というかこの先生も大概最低です。
それでも、付き合っちゃう(というか付き合わざるを得なくなる)のが我らがネッキー。
ゲーマーとしての勘をフル動員しながら、先生もといダメ人間と共に、思わぬ対戦相手との戦いに挑みます。
ゲームとして、かなり面白そうかな、と思えてしまう辺りが凄いです。
最後には微妙に感動してしまうシーンが待っているあたりもまた……。
しかしそのゲームをプレイした先に待っているものを考えると、遠い目をしてしまいます。
どうしてあんなゲームをプレイしてしまうのでしょう。わかりません。わかりません。
しかしそれが、ゲーマーの性、ってやつなのかもしれません。こわい。

相変わらずの、悪意の塊っぷりに笑わせていただきました!
とりあえずヒールマンは許さないよ。
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2013/11/06 23:29 | 読書記録
読書記録:『世界再生の書物と一つの楽園』
『世界再生の書物と一つの楽園』
著者:秋山真琴 さま
サークル:雲上回廊
ジャンル:遠未来学園異能SFファンタジー

著者の秋山真琴さんには色々とお世話になっているのですが(過去ログ参照)、実際に秋山さんのお話を拝読するのはこれが初めてであることに今更気づきました。
青波、地味にアンソロジーは苦手で、単独のものばかり買っているもので……。

遠い未来、人間が量子化を済ませ、荒廃した地上を見捨てて天上のコンピュータ上に生きている、そんな時代のお話。
地上のネットワーク上に存在する、六つの学園からなる仮想空間の「楽園」には、天上から己の情報を伏せて学園生活を送る「学生」たちが生きている。
そんな中、唯一、自分についての情報を完全に欠落した、つまりこの世界にはありえない「記憶喪失」の少年が現れたことから物語が始まる……。
上記のような舞台設定を聞いた瞬間に、胸を撃ち抜かれた気分でした。
仮想空間を舞台にした物語が好きで好きでたまらないSFファンタジー屋には、ドツボな設定であります。
また、表紙の空の青さ、そこに立つ少年少女の姿に止めを刺されて、速攻で購入を決定しました。
空の青さには、弱いのです。それが仮に、かりそめのものであったとしても。むしろ、かりそめである方が燃えるというものです。

そして、実際に本を紐解いてみれば、本いっぱいに広がる「学園」の情景と、学園に生きる個性的な生徒たちのやり取りから目が離せなくなります。
ジャンルの欄にもあるとおり、この物語は、上記のような設定を意識せずとも、夢中になって楽しめる異能ファンタジィバトルものなのです。読者である私たちは、難しく考えることなく、記憶喪失の主人公と共にすうっと、学園内で繰り広げられるとある「戦い」の只中に入り込んでいくことになります。
「クラス対抗レクリエーション」と銘打たれたそれは、とある一つの「書物」を、各クラスの代表者たちが己の能力を駆使して奪い合う、というものです。その「書物」を手にした者は、己の願いを一つだけ叶えられるのだ、といって。
この彼らの振るう「能力」である「ギフト」が、能力バトルもの大好きな自分はわくわくして仕方ありません。
特にA組代表のメイドを率いたお嬢様、工藤十和子さんの能力がものすごく好みなのですが、語ってしまうと丸々ネタバレになってしまいますのでここでは割愛。
そんな戦いの中、主人公は学園長の娘……という設定を持つ少女、ディラン志弦に連れられて、世界の真実を教えられながら少しずつ、少しずつ自分がいる場所のことを考えていくことになります。
その間にも、「レク」と称される戦いは進んでいくわけですが、その結末は是非手にとって確かめていただきたいと思います。

この物語の構造の面白いところは、描かれる世界が「仮想」であり、しかし彼らにとっての「現実」というところだと思います。
仮想の学園の中に生きる学生たちは、それぞれが、本来の立場とは別の「何か」を演じているのだと、主人公は最初に聞かされることになります。
しかし、彼らはある意味では典型的な「キャラクター」でありながら、生きていくために戦い続けます。圧倒的な死の予感に全力で立ち向かいます。実のところ、この世界での死が直接の「死」ではないことも示唆されるのですが、それでも、彼らは確かに全力で生きているのです。
それは、ところどころで示される、気まぐれに生み出され緩慢に生きるだけの生に飽いた存在……つまり、彼らの本来在るべき姿とは対照的に、激しくも鮮やかな「青春」の香りがするのです。

果たして、この世界の構造が自分に何処まで飲みこめているかはわかりません。
まだまだ、語られていない部分も多く、末尾に付された世界の年表を見ても私の理解など及ぶはずも無く。
最後まで駆け抜けた今もまだ頭の中にぐるぐると、色々な思いが駆け巡っています。
ただ、最後の最後に、一枚の挿絵と共に描かれた「五月」。
その空の色に、何となく、爽やかな香りと一抹の希望を感じる。
そんな、妙に爽やかな後味を残すお話なのでありました。

2013/11/06 22:58 | 読書記録
読書記録:『双子の夜と魔女の生贄』
『双子の夜と魔女の生贄』
著者:天月翔子 さま
サークル:かぶ☆けん
ジャンル:成長系異世界ファンタジー

 魔女の血を受け継ぐ一族の掟として、片割れが「魔女の生贄」として死ぬ運命にある双子のアイとユイ、そして、同じように生贄として連れてこられた「外の人間」である青年ハヤが織りなすファンタジー。
 今まで、自分たちが生きていくために「生贄」を捧げることを疑問にも思っていなかった少女二人が、ハヤとの交流を通して、少しずつ自分たちの置かれている世界の歪さを理解していく過程が丁寧に描かれていきます。
 二人を包む世界は、双子自身がそれに気づいた途端、残酷さを露わにします。けれど、囚われの身でありながら、涼やかな風のようなハヤに導かれて紡がれる双子の物語は、あたたかな空気に包まれていました。
 そして、双子は戸惑いながらも、自分たちの前に現れたものを見つめ、自分たちで考えながら、自分の立っている位置を、自分自身の「本音」を確かめていくのです。
 悩んでも、恐怖しても、醜い感情に囚われても、それでもいつかは、前へ一歩進んでいける、と。そういう前向きな心を信じさせてくれる優しさに満ちた、お話です。
 また、全容は明らかにされていませんが、ハヤや双子の前に現れる者たちが語る世界の構造に、思わずドキッとしてしまいました。土と砂と水の香りがするファンタジーと思って読んでいたのですが、まさかの言葉がちらほら。「彼ら」の目から見た世界は、どう見えているのでしょう。わくわくが止まりません。
 鮮やかに描かれる幻想世界と、軽やかで優しい雰囲気が見事に溶け合う、素敵なお話でした。

2013/11/03 22:29 | 読書記録
【プレレビュー】読書記録:猟犬の残効
『猟犬の残効』
著者:三日月理音 さま
サークル:HONKY-TONK
ジャンル:社会派×ハードボイルド
 
 三日月さんが、前回プロット会に出されたお話を完成させたということで、一も二もなくプレレビューに食いついたのが私です。だってプロット時点ですごく面白そうだったんです……!
 ゆるい本読みである自分は、「社会派」という文句に最初はお堅い話なのかと思って身構えましたが、蓋を開けてみればとんでもない、息つく間もなく、最後までページを繰る手を止められませんでした。
 そのくらい良質な、エンターテインメントとしての形を持っている作品です。
 
 この物語は、ジャーナリストのダイアンと、その元夫である刑事ギルバート、そしてダイアンの養女である戦災孤児ジャンナの三者を中心に描きながら、過去に起きたある事件と、その事件を模倣するようにして起きた現在の事件が絡み合っていきます。
 過去は決して彼らにとっては過ぎ去った出来事ではなく、今起こっている事件を通して、否応なく三人の前に突きつけられます。けれど、ただ突きつけられるだけではなく、そこから、一歩踏み出す契機でもありました。
 特に、戦場に置かれていたその時で時間を止めてしまい、現実から一歩乖離した場所に生きていたジャンナに起こった変化は、彼女の周囲にいたダイアンやギルバートに及ぼした影響も含めて、息を詰めて見つめてしまいました。ダイアンやギルバートとはまた違う覚悟をもって現実に一歩踏み出したジャンナの足取りは、強い印象を胸の中に焼き付けていきました。
 そして、過去の事件を通して、自分の立つべき場所を奪われながらもなお、自分のジャーナリストとしての感覚に導かれて、今もなお足掻くことを止めない(もしくは「止められない」)ダイアンは、やがて、現在起きている事件を通して自分の国を包もうとしている、一つの大きな流れを目の当たりにすることになります。
 それは、外側から見れば明らかに異常ですが、内側にいる人間はそれに気づくこともなく、気づこうともしない。そういう「流れ」が、ゆっくり、しかし確かに国を覆いつくそうとしていたのです。
 ダイアンは、その「流れ」を目の当たりにして、とある行動を起こします。その行動の結末は、是非、物語を通して見届けてほしい。一気に物語を読みきった後の余韻に浸りながら、そう思わずにはいられませんでした。
 
 それから、一気に物語を駆け抜けた余韻を堪能して。
 ふと、自分の周囲に目を向けると、それこそ、この物語の中で描かれた「世界」そのもののような、澱んだまま、自分でものを考えることもなく、ただ与えられたものを享受するだけの世界について考えずにはいられません。
 自分が今立っている場所にダイアンの姿はありません。しかし、物語を通してダイアンが貫いたものは、今、自分の心の中に残っています。物語を終えてから顔を上げて見た世界は、少しだけ色を変えて見えました。
 決して、それだけで何かが変わるわけではありません。しかし、自分が生きている社会への「気づき」を与えてくれるという点で、この小説はまさしく「社会派」という文句に相応しい物語なのだと、改めてそう感じたのでした。
 
 煙り、乾いた空気の中に確かな熱を秘めた物語。是非、少しでも多くの方に触れていただきたいなと、一人の読者として願って止みません。

2013/10/26 21:09 | 読書記録
読書記録:『虫めづる』
『虫めづる』
著者:良崎歓 さま
サイト:SIREN
ジャンル:現代学園恋愛

昆虫って、いいですよね……!
このお話は、虫をこよなく愛する少年「彼」と、そんな少年に寄り添う少女「彼女」のやり取りを綴ったツイッター小説を纏めたものです。

この二人のやり取りが、本当に、きゅんきゅんするのです。
相思相愛な二人なのですが、何しろ虫が大好きで仕方ない「彼」のこと、会話はとにかく虫の話題を交えて進んでゆきます。
それは「彼」なりの照れ隠しでもあったりするのですが、そんな「彼」の思いをひとつひとつ、丁寧に、時に大胆に汲み取っていく「彼女」。
百四十文字という文章で綴られていく二人の時間は、とてもゆったりとしていて、でも、確かに季節は移り変わっていって。「彼」と「彼女」の過ごし方も季節と一緒に変わり行くのと同時に、四季と虫との切っても切れない繋がりを感じずにはいられません。
また、ほとんどの話にはそのエピソードにまつわる虫の名前と分類が表記されていて、「これはわかるわかる」とか、「こういう特徴だったのか」とか、虫好きにはたまらんつくりになっております。
是非「彼」ではないですが、昆虫図鑑片手に!(ぐっ)
特にウスバキトンボは自分でも扱ったことのあるエピソードなので、何かこう、来るものがありますよね……。

しかし本当に「彼」が愛しいです。
オニヤンマが好きで、眼鏡のフレームがオニヤンマの目の色と同じ青緑色とか、もう、もうね! キュンとしないわけないですよね! というトンボ好き青波(←)。
あと「彼女」と身長差があんまりないところとか、虫の話以外に関しては極めて不器用なところとか、本当に、自分のツボをどれだけつけばいいんですか!
でもきっと、どれだけ「彼」が好きでも、「彼女」のようにはなれないなあ、とも思うのです。
「彼女」は、決して虫に詳しくなく、知らないことばかりで。でも「彼」のことを知りたい、「彼」と同じ場所に立っていたい、というひたむきな思いをもって「彼」を見つめていて。
そんな「彼女」だからこそ、「彼」は「彼女」の存在に救われていて、そして「彼女」を愛し続けているのだ、ひとつひとつの短いセンテンスの中からもはっきりと浮かび上がってくるのです。
この二人の関係性は、もはや切っても切れないものなんだなあ、と。
優しい気持ちで二人を見守っているような、そんな感覚で読み進められる、とても素敵な青春物語です。

2013/05/18 19:42 | 読書記録

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